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お知らせ

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日本乳癌学会学術集会を終えて
《清水千佳子先生からのご報告》

2018年07月03日 更新

 

 

清水千佳子先生(国立国際医療研究センター病院・乳腺腫瘍内科科長)からのご報告

 

早いものでもう梅雨入りです。乳癌学会が終わって一息ついていると、ワット会長から「学会報告をせよ」との指令がきました…いつも貴重な機会をありがとうございます(笑)

私の中での今年の乳癌学会の最大のイベントは、最終日の「患者市民の研究参画:新しいシステムの構築に向けて」というミニシンポジウムでした。
医学や医療は、「研究」の積み重ねで進歩しています。細胞のなかの分子レベルでの動きを知る研究から、患者さんにご協力していただいて新しい治療法の有用性を確認する臨床試験、看護師をはじめとした医療従事者の患者・家族とのかかわり方、費用対効果など、さまざまな「研究」があり、そのどれもが患者・家族のwell-beingにつながることを目指して行われています。
学会とは、日常の診療の傍らで行っているそうした研究活動(もちろん研究を生業としている先生方も参加されます)の成果を発表し、研究方法・結果の妥当性や研究の意義について議論をして、明日の研究活動につなげていく場なのですが、そもそも「研究」というものが患者さんや一般の方によく知られていないということに問題意識を感じていたところ、会長の戸井先生が「今でしょ!」と背中を押してくださり、確か年が明けてからですが、すでにぎっしりだった学会プログラムにこのミニシンポジウムを加えてくださいました。
ミニシンポジウムでは、M. D. Anderson Cancer Centerの上野直人先生、海外のPatient Advocacyの事情に明るい桜井なおみさんとともに登壇しました。会場の第6会場は、けっして広い会場ではありませんが、患者、医師、製薬企業の方も含め、様々な方々が参加してくださり、席が埋まっていました。

まず上野先生から、米国で、Patient Advocacyは意義があると思える研究を応援するためにどんな活動をしているか、研究者はその応援を得るために、自分のやりたい研究がいかに患者さんや社会にとって意義のあるものかを、いかに患者支援団体に言葉を尽くして説明をしているかのお話がありました。残念ながら、研究はタダではできず、「応援」はお金のことであり、研究資金の獲得は万国共通の問題です。Patient Advocacyと研究者は、研究を実現するために、チャリティーイベントを行ったり、政府に働きかけたり、資金獲得のための様々な活動を共に協力しながら行っているそうです。

桜井さんからは、研究に参画をするために、欧米でPatient Advocacyにどんな教育が行われているかのお話がありました(彼女自身が参加した研修プログラムの数にびっくりです…20個近い!)。さらにPatient Advocacyや研究資金を提供した人たちが、自分たちの獲得した研究資金がどんな成果を生み出したのかをつぶさにチェックしていることも紹介されました。
欧米諸国から報告される数々の良質のインパクトのある研究成果の背景に、こうした患者や市民と研究者の徹底的なコラボレーションがあることを、私たちはどれだけ意識しているでしょうか。 日本は、残念ながら親方日の丸、「研究」はどこか遠くにあって、患者さんや一般の人に「研究」について話すと、たいがいの方は「私、素人ですから」と、すーっと会話をかわされてしまいます。このような状況になったのは、社会に対して「研究」の意義を説明してこなかった研究者側の責任でもあるのかもしれませんが、「研究」は「研究者のもの」ではなく、最終的には患者に還元されていくべきものであり、社会全体のものではないでしょうか?

上野先生、桜井さんとの事前の申し合わせはまったくなかったのですが、3人のtake-home messageは、患者・市民も「研究」を学び、患者でないとわからない経験をふまえて研究に参画しよう!研究者は「研究」と自分の研究の意義についてきちんと説明していこう!ということで一致していました。フロアを交えた総合討論の最後では、司会の大野先生が、患者団体の今までの取り組みを尊重しつつも、明日の乳癌医療をよくするための研究については患者・市民・研究者みんなで力を合わせよう、乳癌学会はこうしたPatient Advocacyを育てることにコミットしよう、とまとめてくださいました。ミニシンポジウムの前は、このテーマがどのように受け止められるかとても心配していましたが、最後に満場の拍手で会場の皆様のコンセンサスが得られたとき、心が躍りました。

とはいえ言うは易し。日本で、欧米のような研究基盤を実現するには、患者・市民、研究者それぞれに対して教育が必要で、並々ならぬ覚悟と根気が必要だと思います。欧米諸国に比べると研究の基盤環境の仕組みづくりが周回遅れ以上に遅れている日本ですが、最初の一歩がなければ次に進まないのも真実。機会を作ってくださった戸井先生、会場にいらしてくださった様々な立場の方々(あけぼの会の方のお顔も見えました、ありがとうございます!)、帰国日に無理やりスケジュールをこじ開けてプレゼンテーションしてくださった上野先生、病院の外の様々な世の中の事情を教えてくださる桜井さん、司会の大野先生と三好綾さん、そしていつも陰に日向に応援してくださるワットさんに感謝しつつ、次の一歩が着実に進むよう取り組んでいきたいと思います。
             2018年6月7日 清水千佳子(国立国際医療研究センター病院 乳腺腫瘍内科科長)
        (参照:患者が選ぶ Doctor of the Year 2014:http://www.akebono-net.org/-doy.html)