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巻頭記事

巻頭記事

全国の乳がん患者さん、あけぼの会のみなさんへ ②の2(5月8日更新)
術後薬物療法(アジュバント療法)のブレークスルーイヤー(Break-through-Year)
                 戸井雅和教授(京都大学大学院医学研究科・外科学講座乳腺外科)

2022年05月07日 更新

ポルトガルの喜望峰からの絶景(仮)ポルトガルのPort(ポルト)絶景
―リスボンに次ぐ第二の都市―
(Sandy 2022/4月)

2.トリプルネガティブ乳がんに対する免疫療法
 トリプルネガティブ乳がんに対しては、ペンブロリズマブ(キイトルーダⓇ)の有用性を検証する臨床比較試験KEYNOTE-522試験の結果が報告されました。ペンブロリズマブはPD-1を標的とする抗体療法です。対象は、概ねStage 2/3の症例で、術前化学療法にペンブロリズマブを併用する群とプラセボ投与群の間で比較検討が行われ、術前化学療法にペムブロリズマブを追加することで、再発などのイベントの発生のリスクが有意に減ることが明らかになりました。大きなインパクトのある結果です。

  KEYNOTE-522試験
 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象とした第3相試験
 PD-1(Programmed death receptor-1)免疫チェックポイント受容体
 

3.HER2陽性乳がんに対するHER2抗体トラスツズマブの長期成績
 HER2陽性乳がんのアジュバント療法に関して、昨年EBCTCGグループ(前述)は、抗HER2抗体トラスツズマブ(ハーセプチンⓇ)の長期予後に及ぼす効果について報告を行いました。13,864例を含む大規模メタ解析(前述)です。術後10年程の期間において、化学療法にトラスツズマブを加えた症例では、化学療法単独と比べ再発リスクが約2/3に減ることが明らかになりました。また、死亡率も同様に約2/3に減っていました。〇〇の双方の観点からの分析でも総合的に大きなベネフィットが得られていることが証明されました。 

4.独り言
 原発乳がんの治療成績は年々良くなっています。一段ずつ積み上げるような作業が臨床試験の場を中心に、この40年ほどの間、行われてきました。その中で当然、波がありますが、最近の波は大波と言ってよく、ブレークスルー(躍進)となる成果報告が相次ぎました。画期的成果の連続といっても過言ではありません。
 ホルモン受容体陽性、HER2陰性乳がんに対する新しいアジュバント療法の導入は長らくなかっただけに、大きなインパクトとなりましたし、他方、トリプルネガティブ乳がんに対する免疫療法の導入も本当に画期的です。
 本庶 佑先生の発見発明に基づく治療法が、いよいよ原発乳がんの治療にも応用されます。他にも、経口フルオロピリミジンやエリブリン、ホルモン療法、抗体薬物複合体薬など日本で創られた薬が多く乳がん領域で使われています。いずれの薬物も大変重要な役割を担っています。今年から来年にかけては、新しい治療法の実地臨床への導入が期待されます。
 一方で、最新の技術(病理組織検査、遺伝子検査やゲノミックアッセイなど)の導入により詳細なステージング(病期診断)と正確な再発リスクの推定や治療効果予測も出来るようになっています。ゲノミックアッセイ(genomic assay・遺伝子操作)

最後に
グローバルに情報共有をしましょう!
 プレシジョンメディスン(precision medicine・精密医療)、精密な診断と的確な治療の実施が一つずつ確実に達成されているように感じられます。コンセプトやアプローチ法が洗練される一方で、治療の体系としては複雑かつ高度になっています。薬だけを見ても、作用の異なる薬物が同時に幾つも導入され、フォローするだけでも大変です。
 診断も手術療法も放射線療法も形成外科領域も、あるいは若年女性、高齢女性への対応も、また検診などの領域も、あるいはPROの導入、AIの導入なども、いろいろな分野すべてで、何か急速に、多面的に進化している様な感じです。遅れることなく、むしろリードするようになればと思います。
 PRO(Patient-reported outcome)患者から直接得られる健康状態に関するすべての報告
最新情報をキャッチして行きましょう。グローバルに情報共有をしましょう。
 一人でも多くの方が乳がんからの生還者になられることをお祈りします。