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エッセイ

ワットさんの笑って長生き

「最終メールfrom London A」

2012年04月22日
●ロンドンは春なのに天候不良、昨日はにわか雨が転じて雹、バチバチ音を立てて降った。聞けば、東京も3月の気温とか。もうじき5月というのに、いつまでも冬に逆戻り。夕べは初めて導眠剤なしで眠りに着いた。夜半数回目覚めたが、また寝入って、まずは朝まで寝た。こうしてやっと現地時間に調整されると、早や明日は帰国の途、今度は日本時間に調整になる。思い返せば、つくづくこの時差に苦しめられた年月だった。英国まで12時間半の長い飛行の大変さに同情してくれた人が多かったが、私は何よりも時差が辛かった。

●お葬式も終わり、もう当分来なくてよくなったので、この苦痛から解放される事がまずうれしい。苦痛は他にもあった。往き返りのフライトの日にちを決めて、ネットで予約するストレスが大きかった。毎回、安い切符を探して買っていたのだが、その種の切符は変更が効かない。決めた飛行機に乗らなければ無効になる。一度だけ、病人の急変で、帰りの切符を無効にしてしまった。なら、片道を買えばすむのだが、値段が往復とほぼ同額なので、つい往復を買ってしまう。結果、常に日本発英国行き片道切符が手元に残ることに。

●スーツケースのパッキングもほとほといやだった。出発前日夕方6時に宅急便が取りに来る。きちんと詰めて、出すばかりにしなければならない。時節に合わせて着るものを選ぶ。寒い時は忘れずにホカロンを滞在日数分入れた。それが、こちらの出国審査にいつもひっかかる。あんなものが、自爆テロの嫌疑になるらしい。私も、うっかり貼ったまま、飛行場へ向かう。ホカロンは最初熱過ぎて、あとで丁度よい温度になるので、貼っていくと機内で丁度いい、という目算だった。ある時、大ごとになり、別室に連れて行かれた。

●グンゼのキルト羽毛チョッキを着ていて、その上に一枚貼っていた。別室の椅子に座らせると、女性係官が電話で誰かに「彼女は全身に貼っている」と報告しているではないか、私はダイナマイトオバサンではない。「中を見せますよ」と言うと、「Oh, No!」と叫ぶ。思うに、見せる動作が即爆発につながると、止めにかかったらしい。その憶測が余りにばかげていて、私は笑っている。「バカね、アンタ、この暇に本物を捕まえなさい」でも、これも今思うに、私の含み笑いは、テロオバサンの大胆不敵な笑み、に見えたのかもしれない。

●苦痛とまでは言えなくても、イギリスまで女一人旅の繰り返し、それも年老いて66から72まで。道中、話し相手がいないので、黙ったままの長旅は精神的に参る。それをとにかくやってのけたのだから、私ってすごい。でもよく考えれば、この間、ALSという難病に取り憑かれて逃げられなかった夫の悲痛を思えば、私の難儀など話にもならない。すごかったのは、6ヶ月の命と言われて、6年も生きた夫のほうだった。この瞬間にも世界中にALS患者がいて、支える家族がいる。負担が少しでも軽減されることを祈りたい。

●2012年、これから、エリザベス女王在位60年の祝賀と8月のオリンピックの二大行事が待っている。そして、今日はご存知、ロンドンマラソン、第32回目、2010年は36,550人が完走し、集めた寄付金の総額が世界一、500×100万ポンド、日本円に換算してみて。物価が高くて敬遠されそうなロンドン、にもかかわらず、観光客の数が世界一、4月に雹が降ろうが、ここは魅力の世界都市、いつ来ても夫に会えそうな都市、いつかまた来よう。

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