さて、あなたは次に入院の申し込み書を提出しなければなりません。病気ががんと判明したのですから、もう逃げられない。前に進むしかないのです。こんな風に言うと、反発する人が必ずいます。「もう逃げられない、なんて言いかたはひどい」
でも自分の身に起きた現実からは逃避できない。逃げ切れないのです。ですから無駄な抵抗はやめて、次に何をどうするか考えましょう。
なかなかそこまで冷静になれないのもわかります。でも、あなたはこれまでにも人生の危機を幾たびか乗り越えてきたはず、それを思い出して、あの時できたのだから今度もできる、と自分を奮い立たせるのです。勇気を出してください。こういうときにこそ、あなたのありたけの勇気を使うのです。
検査を受けた病院、担当医はどうでしたか。信頼できそうですか。誠意を持って、受け答えしてくれましたか。その道の専門ですか。検査を受けるだけ、と軽い気持ちで、近所の病院へ行った、手術となれば、あらためて医者を選びたい、という人もいるでしょう。
今は簡単に情報を入手できます。あなたの希望する医者を探すことも不可能ではありません。また、一つの病院だけでなく、もう一軒別の病院に行って、意見を聞くことだってできるのです。<セカンドオピニオン>というのはこのことです。
病院について、周囲の人に相談したら「あそこの病院で家の父が死んだ、だからやめたほうがいい」とか、「乳がんなら東京の病院へ行ったほうがいいのでは」とか言われて迷っている、どうしたらいいでしょう、というような相談を受けます。巷の評判もたしかに参考にすべきですが、やはり最終判断を下すのは自分の目です。自分で話しをしてみて、波長が合うか合わないか。合わなければ、やめましょう。五年十年という先が長いお付き合いになるのですから。
「医者選びも寿命のうち」という諺がありますが、「寿命」とまでは行かなくても、乳がんなら手術後の十年をともに過ごす伴侶のような存在ですから、十年の日々を左右することは確かです。波長の合わない人を主治医と仰がなければならない患者の悲壮な十年の歳月を想像してみてください。