会長あいさつ

再び、誇り高く美しく!

【あけぼの会】は1978年10月、「同じ体験をした人と会って話がしたい」という一患者の新聞投書(毎日新聞1978/5/29)がきっかけで誕生しました。45年も前のことです。

以来、「今、一番困っている人の役に立つ」をモットーに、地道に歩んで来ました。患者の手で、患者のためになる患者会を目指して、今、日本全国に2000人の会員がいます。

現実をきちんと受け止め、正しく知り、納得して治療を受ける、そんな時代です。みなで知識を分かち合い、主治医ともよい関係を保つ。そのために謙虚に努力を惜しみません。

「あなたは一人ではない」同じ体験をして、同じ思いの人たちがあなたの近くにいます。

それが「あけぼの会」、どうか、あなたも入会して、あなたの力を貸してください。

2024年1月10日
あけぼの会会長 ワット隆子

あけぼの会誕生のきっかけ

会を始める発端となった「乳がん体験者の集い」を呼びかけた新聞記事です(1978.5.29 毎日新聞)。

乳ガン体験者の集いを 定期の検診も習慣化したい

「東京都町田市で、乳ガンではないか、と気にやんだ主婦が娘二人を道連れに心中した」というニュースを読み、私は昨年八月に、江戸川区の四十一歳の主婦が、乳ガンの手術後ノイローゼになり、飛び降り自殺をした、という事件を思い出した。

実は私も、昨年二月に都内のある総合病院で、乳ガンの手術を受けた。以来今日まで、一年三カ月余り、一日も欠かさず薬をのみ続けているし、また毎月一回検診を受けている。今ではすっかり精神的には立ちなおり、手術前とほとんど同じ日常生活を送っているうえ、手術後一度は断念したヨガを、医者の励ましでまた教えている。

乳ガンは、私の知る限り、早期に発見しさえすれば、手術でほとんど安全に除去できるし、その後の生存率も、発見が早ければ、相当に高いものと統計に示されている。

しかし、手遅れになるまで放っておけば、確実に命取りになることも同様に立証されている。自殺をした二人の婦人に共通する点は、ただガンを恐れるのみで、素人なりのガンに対する予備知識を、持ち合わせていなかったことだと思う。

アメリカでは、三十歳を過ぎた女性は皆、半年に一度、乳ガンと子宮ガンの検査を受けることが常識とされている。私は三十一から三十六歳まで五年間、アメリカで暮らしたのだが、初めて婦人科のドクターを訪れた時「最後にガンの検査をしてもらったのはいつか」と聞かれ、それまで一度も調べてもらったことがなかったので、恥ずかしい思いをした経験がある。

しかし、この経験のおかげで、私は自分のガンを、いわゆる初期の段階で食い止めることが出来たのだ。

そこで、日本でも三十歳を過ぎた女性は皆、毎年二回、乳ガン、子宮ガンのテストをしてもらうのを習慣化すべきだと思う。それらは家庭の主婦ならば、本人のためだけではなく、主人のため、子供のためにも、当然の義務であると自覚すべきと思う。

またアメリカには、乳ガンの手術をした女性を対象に“REACH TO RECOVERY”という組織があり、手術の体験者が同じ手術をした人たちを病院や自宅に訪ねて行って、慰めたり、励ましたりしている。

日本にも、名古屋に、これに匹敵する“沢泉会”という集まりがある。私も去年の夏、その定例集会に行って来た。若い人から年老いた人まで約百五十人もの会員が一堂に会し、手術後の疑問や不安や体験談を話し合って、大変有意義な集まりであった。残念なことに、沢泉会は名古屋一円に限られている。

そこで私は、関東地方にも一つ、乳ガンの手術をした者同士が集まって、話し合う場を持ちたいと願っているのだが、どうだろうか。それは単に、体験者同士の救いになるのみでなく、一歩進んで、自分たちの体験を生かして、今、ガンではないかと気にやんでいる人から、実際に手術を受けて入院いしている人、それから手術後、ショックから立ちなおろうとしている人たちすべての助けになろうと努めるのであれば、大変意義のある集まりになると信ずる。