「乳房温存手術をして一年後に局所再発してしまった。主治医を信頼できなくなったので、別の医師にかわりたい。いい先生を紹介してほしい」
主治医と患者の関係は夫婦のように末永く続けば、それに越したことはないのですが、どうしてもうまく行かないときは夫婦の離婚のように別れたほうがお互いのため、のときがあります。また、それはがんのような一生の病気である場合、すばやく決断して別のドクターに移行するのは賢い患者の知恵ともいえるでしょう。
でも、かわりたい理由に説得力がないといけません。上の相談のように、ただ単に再発してしまったので信頼できなくなった、というのでは余りにも身勝手というものでしょう。ドクターだけを責めるのは不公平。なぜなら再発は完全予知できるものではないからです。また、温存手術のあと、万が一、再発したら、また手術をしなおす(局所的切除か全摘手術)というのは常識です。この患者は温存手術で完治すると勘違いしたのでしょうか。勿論、完治する場合もあります。
要は、最初の手術の段階で、主治医が患者になんと説明し、患者はそれをどう理解納得したか、です。「温存手術で大丈夫と思いますが、もし再発したら、そのときは手術をしなおします。よろしいですね」と念を押していたものか。念を押すどころか「温存で平気平気」と軽くあしらっていたものか。もし後者なら、患者が見切りを付けたくなっても当然でしょう。真剣さが感じられないからです。
ただ、患者もここというツボは押さえて主治医に確認しなければいけません。
「(勿論私は温存手術のほうがありがたいのですが)、温存手術をする根拠はなんですか」「再発の心配はないのでしょうか」「もし再発したら手術をしなおすとおっしゃいますが、最初から全摘するのと比較して不利ということはないのですか」
疑問はなんでも聞くべきです。最近はドクター陣も心得ていて、辛抱強く答えてくれるようになっている。大昔なら、しろうとがそんなこと聞いてどうする、私を信用できないのか、と一喝され、患者は縮み上がったものです。患者が何を聞いてもよくなった。でもそれはドクターに対する尊敬の念を捨て去ることではないのです。安易に主治医をかえる前にもう一度、状況を反芻してみてはいかがでしょう。