ロンドン今日は久しぶりの雨。雨後の新緑若葉の緑の清清しさ、美しさよ、息を呑む。多雨で有名なこの都市も世界的異常気象のせいか、私がいる間、思ったより雨が少なかった。その上、昨日おとといと珍しく20度を越す暖かさ。気の早いロンドン子は夏到来とばかりに半袖、タンクトップ、サマードレスに着替えて完全夏姿。こんなのはまだ本当の夏ではないでしょ、と言いたいところだが、英国民は「夏とおぼしき陽光はすかさずキャッチせよ」の合言葉で謳歌している。雨の街によく似合った、長い傘をステッキのように持ち歩く、かつての英国紳士姿を目にしなくなった。折りたたみ傘に切り替えたのでしょ。
夫は全く喋れなくなって以来、欲求不満がつのるのか、癇癪を起こす。タオルを思い切り怒りを込めて投げつける。ベッドから起こして、立たせて、車椅子に移す時も、上半身を90度に上げると同時に一体感で両足を地面に下ろすのだが、そのタイミングが微妙で、私は上手にできない。私の顔を指差して、不満を表す。微妙な足の位置で腰に激痛が走るらしく、それを訴えるが、私だって必死なのに、恩知らずよね。これほどスタッフが揃っていてもこうなのだから、世界中のALS患者家族はどんな苦労をしているか。
思えば<日本ALS協会>に入会したのを忘れていた。あれは2月、入会時に機関誌が送られてきたが、それきりで何の音沙汰もない。(それに引き換え、我があけぼの会はサービスがいい。サービス過剰でしょう)実はその機関誌を開くと、そこに突然車椅子に乗って人口呼吸器を付けた会員の大きな写真があってびっくり、反射的にページを閉じちゃった。あまりにもリアル、現実から顔をそむけてはいけないのだけど、患者に成り立ての人にはショックが大きすぎる。デリカシーがなさ過ぎる。他の人がそれでよいならよいのよね。私はこの会では一会員で、会長ではないので、偉そうにはいえない(でもいっている)。
ミラノは2回目参加の富樫さんが日本から来て、現地で合流。11、12の二日間をこなして、13日に二人でロンドンに舞い戻って、14、15と観光を楽しんで、共に16に日本に帰る。彼女は去年、菊池さんと一緒に、ノバルティスの女性社員のエスコートで、ヴェニス、フィレンツエのイタリア2大観光スポットを見ているので、今年はイギリスまで足を伸ばすことになった。あけぼの会のHP「エッセイ」欄で自身の「再発治療日誌」を紹介し始めたばかり、目下再発治療中なので、元気なうちに世界を見せてあげたいと思っている。
思えば、私があけぼの会を始めたのは1978年、手探りだったが、アメリカから帰国したばかりだったので、米国がん協会にアドバイスをもらった。夫が英語で手紙を書いてくれて、がん協会を訪ねる飛行機の切符なども手配してくれて、立派な秘書役、それに旅費も宿泊も払ってくれたのだから、会は彼に恩義があるでしょう。28年後の今は製薬会社がスポンサーの国際会議が多いのだが、ほかにReach to Recoveryという乳がん病院訪問ボランティアの国際会議にはスポンサーが付かないので、自分のお金で参加する。20年も前からイタリアでもどこでも単身で乗り込んでいた私って、やはりすごい。こうしてすぐに自分だけを褒める私が肝心の夫の長年の陰のサポートを忘れている。恩知らずは私だった?