タイから帰りました。帰ってから実はもう五日になります。極暑の国から極寒の国へ、気温差25度以上。昨年5月にロンドンからリスボンへ飛んだ時の気温差は30度以上ありました。人間の体はこれほどの気温差にも平気で対応するので驚嘆です。しかし、人間のメンタルな習慣は2週間でほぼ完全に変えられてしまう。例えば、2週間パソコンの前に座らずに、物を考えたり書いたりしないと、思考力も文章力も衰えて、書くのが非常に億劫になる。そう、自分の怠け癖を弁解しています。

 バンコックに住んでいる娘のパソコンは日本語対応になっていなくて、それで時間はたっぷりあったのですが、ワードに書けないので、いいこと幸い、何もしなかった。毎日近所のスーパーへ買出しに行って、働いている娘の喜びそうな日本食を作って食べさせて。孫には娘が日ごろ禁じている甘いものをこっそり食べさせて、興奮するさまを見て、不良おばあちゃん、大いに満足してきました。

 昨年アメリカに行ったとき、妹の家にやはり2週間滞在したのですが、彼女は朝食を食べる習慣がなかった。私は朝食をちゃんと取ることにしているので、妹にも無理やりテーブルに着かせて、毎朝一緒に食べるようにしたのです。するとどうでしょう、私が日本に帰ってからも彼女、朝おなかが空くようになり、何か必ず食べるようになったという知らせ。彼女の人生を一変好転させた、と自負していました。

 柳の下にドジョウがあと一匹いるか。今度はバンコック遠征朝食普及員です。ちゃんと座りなさい、ハイ、卵にトースト、マンゴにパパイア、といったトロピカルメニューで一同着席。おいしいわね、おなかすいたでしょ、と大いなる暗示をかけることも忘れずに、眠そうな顔面などものともせず、渾身の力で挑んだのでした。今、普及員が至近距離にいなくなって、さて、朝食は慣習化されたでしょうか。結果を知るのが恐ろしくて、確かめていません。

 そうです。人間は1週間あれば習慣を変えることが出来るのですよ。よいほうにも悪いほうにも、です。手術の後、腕が上がらなくなって、痛いのを我慢してリハビリをさせられましたが、あの時、主治医が私に言いました。「腕を1週間下ろしたままで寝ていると、体にくっついた状態になって、上に上がらなくなるものだ」と。それは困る、とばかりに必死でリハビリに励みましたね。

 真冬に暑い国へ行って、真っ赤な太陽の下でノホホンとする。神経もふやけてしまい、面倒なことは一切したくなくなる。休暇なのだから、これでいいのだ、とは思いつつ、やはり日本のあけぼの会が気になっている。帰ったら、あれもこれも始めないと間に合わないと、頭の隅では常に追っ立てられている私。25周年が過ぎたら、娘と息子の所に最低一ヶ月は駐屯して、身の回りの面倒を見てやるのだと「母なる宣言」をしたつもりが何と25周年を過ぎた今年のほうが忙しくなりそうな気配なのです。