ミラノから無事戻りました。ノバルティス社主催「第一回乳がん患者のための国際会議」には「国際」の名の通り、実に28カ国から、計69人の参加あり。やはり女性が主なので、会場は華やかな雰囲気。いろいろな髪の色に色とりどりの衣装。会議場いっぱい輪になって国際連合ミーティングスタイルでした。

 ちなみにノバルティス社が主催するこの手の会が第一回というだけで、「乳がん患者国際会議」はもう数え切れないほど、世界のあちこちで開催されてきています。私も既に10回以上は参加していて、一応日本代表で通っていますが、会議は当然、英語オンリーですので、全部はわからない。意見を言いたくても少し自信がない。

 ならば何故行くかというと、行きたいのよ。外国に行って、インターナショナルの友だちと会って、ハローって言うのが大好きなのです。次元が低いでしょ。でも刺激になって、私には必要な栄養源と考えている。面倒な会議の中身は話半分に聞いて、あとは遊んでいる不真面目日本代表とは私のこと。

 昨年、チューリッヒでの会議はアストラゼネカ社(ノルバデックスでおなじみの)の招待でしたが、製薬会社だけあって、当然自社の新薬の紹介ばかり。疲れます。それで、終わり近くなったとき、メモにメッセージを書いて、隣席のオーストラリアのリンに渡した。「終わり次第、グループフォトを撮るので、みなさん、どうかリップスティックをつけて」

 リンが「タカコのメモ」と言って読み上げると、みんな大笑い。でも一斉に口紅を付け始めて、中には外していたイヤリングまで付け直している人もいました。
ね、英語でダメなら、この機転のよさ、というか、ユーモアセンスで勝負しましょうよ。

 今回も会議は14日だったのですが、13日の別の会議にも顔を出そうと一日早めに着いたのでしたが、その朝、朝食のテーブルで、台湾から来ていたローラとジョアンと私の3人で、突然、ヴェニスへ行こうと、にわか結束。汽車で行っちゃった。

 翌朝、キプロスから来ていたステラ(この人はとても頭の切れる人で今年、国際がん連合の会長さんになった)が「タカコ、あんた今日はどこへ行くの?」ときくので、会議に出るつもりをしていた私は一瞬うろたえたのでした。が、すぐに、さてはこの人、私が昨日会議をサボってヴェニスへ行ったのを誰かに聞いたな、と感づいたので、「今日?今日はローマよ、決まりでしょ」と、すまして答えると、彼女なんと言ったと思います?

 「あら、残念ね。私はフローレンスだから会えないわね」と真顔で私の顔をじっと見る。勝負あり、一本取られた。でもいいでしょ、こんなセンス・オブ・ユーモア。これが最高の精神鍛錬になる。だから私は、概ね‘ユーモア精神欠如’の日本は退屈で窮屈でいやになって、時々逃げ出したくなる。
思い切り上質なユーモアで交戦して、勝って、「してやった」の歓喜を体いっぱい味わいたくなるのです。