帰国の日が迫ってきた。あと二晩ここで寝たら、またヒースロー空港行き、第3ターミナル、ANAのカウンターでチェックインして、人人人の空港内をなるべく人の顔を見ないように歩いて、ラウンジまで行く。そして座る。日本の新聞を探す。毎回、同じ繰り返しなので、移動の光景が順々に頭の中に浮かんでくる。アナウンスがあってから搭乗口へ向かえば十分間に合うのだが、それより前に一人歩いて搭乗口へ向かう。ゆっくりマイペースで歩いて行かないと焦るから。するとそこは日本人の山、当前だが、日本へ帰る人たち。

 このコラムも今回はこれでおしまい。帰ると、また3ヶ月は戻って来れないので、ロンドン便りもその間お休み。なんだかもう読み手も飽きてきたのか、全く反応がなくて、さみしい。書くのは自分の精神を正常に保つためであって、人様に読んでいただいて感想の一つも送ってもらおうと期待する方が頼み過ぎ、とわかっていても、あと一人くらいは何か励ましのメールをくれてもいいのに、日本の読者はますますつれない。以前も一度苦情を言ったが、今回もこれが最後だから、また言ってやる。ここにいると人恋しいのよ。
 日本へ帰ってからの仕事の山積より、こっちの家のことが心配でまさに後ろ髪が引かれる思い、バンコックのピペットも簡単にはビザが降りないらしくて、いつ来れるかわからないという。当てが外れた。娘も息子も私も三様に、限界ぎりぎりの生活、この上、私が病気にでもなったらどうしようか、内心、今の体に自信をなくしている。仕方なく動いているが、どこからも力が湧いてこないのだ。目の前に夢も希望も見えないせいか。ただ、本当は一つだけうれしい知らせを胸に秘めている。私の「ロンドン便り前半」が本になる。
 ALS闘病家族物語。帰ると連載ほぼ100回分の原稿一文字一文字に目を通す仕事が待っている。いい本にしてもらえそうなので、それが大きな希望でなくて何なの、ワット会長さん、まだあなたにも未来は十分ある。今までの本は乳がん一筋だったが、今度の本はそうではないので、もっと売れるかも。印税の計算を一度はしてみたい。

 8月末には福岡での仕事が待っている。9月15日には熊本であけぼの会30周年記念九州大会。8月中に一度熊本入りして新聞社へ顔を出して大きな予告記事を出してもらうことになっている。そして、10月、乳がん月間。1日はエスティローダーのビッグイベントに招待されて、5日と18日は恒例朝日新聞ピンクリボンフェスティバルのシンポジウムに出演、今年は東京、神戸両会場で司会も任されている。私が燃える日。そして肝心の12日は30周年最後の行事、全国大会を朝日ホールで盛大に、大勢の招待ドクターと観客と祝う日。

 10月26日は新潟の佐野先生に招かれていて、女優の音無美紀子さんと対談。これももう何度もお会いしているので、楽しみ。そして実は既に10月28日発のイギリス行き切符を購入済み。これだけ前もって予約しないといい席が取れないのだ。ANAは一旦購入してキャンセルすると3万かかるので、決めるのは一大決心、しかし、もう3万ごときにこだわるのはやめた。取らぬ狸の皮算用、騒ぐことはあるまい。それでは日本のみなさん、私に会いに上記会場に出かけてきて声をかけてね。詳細は会のHPにて随時お知らせします。

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