金曜日、血液の数値がすべてほぼ正常に戻った。新たな問題が出没しなければ、来週水曜日には退院してもいいと言う。不安のほうが勝って、喜びも半分。というのも、病院側は病人を急性糖尿病、強度脱水症、MRSA感染症で緊急入院した患者と捉えているので、それらがクリアされれば当然退院となるわけ。こちらはALSが重篤になって、ああいう展開になったと理解したので、死んでしまうのか、とお祈りを始めたというわけだ。ALSが何か知らないドクター、ナースが多くて、それで家族が24時間監視を続けたのだった。

 その証拠にナースが私に「バケーションで日本から来たのか」なんて聞く。この埋められないギャップを何としよう。もう5日で、この人にも一生会うこともないのだから、バケーションにしておこう。娘は早速、エージェンシーに電話して、ヘルパーサービス再開を依頼した。出来れば、月から金まで昼間はエリザベス、夜間はヘレン、という最高人事配置の要請も出してみた。今度退院しても、もう寝たきり病人のままだろう。実は入院直後からジョクソーが始まっていて、お尻に大きいの、肩に小さめのが一つずつ出来ている。

 4人シフトの予定が、まず私が金曜にダウンして、病院から帰るとすぐセーターも脱がずに寝てしまった。幸い週末なので、土曜夜は娘が泊り役、私は終日家から出なかった。代わりに得意のチキンシチューを作った。みなさん、シチューはね、最初ににんにく、たまねぎを炒めて、水を入れて、野菜なんでも、セロリ、ニンジン、ポテト、ピーマン、葉っぱがなかったのでレタス、そしてチキン(焦げ目つけて)、味付けはブイヨン、塩、胡椒(大量)、ことこと煮る。それをガーリックライスの上にぶっ掛けて食べる。これが私の発案なのよ。

 口にうるさい息子が3回お替りした。やはり病院でサンドイッチだけではわびしいから、あったかいハウスシチューがいいのよ。今日日曜、夜勤明けの娘にこのコンビを持っていく予定だが、私がまだ寒気が取れなくて、ちょっと心配している。病人はすやすや眠っていて安泰、という報告。数えると、暮れに入院して、水曜は18日目になる。今度家に帰って、似たような事態が起きても、もう入院はさせないね。暗黙の了解が漂っている。その分、密に見守っていくしかない。それでもみなのストレスが減り、体も楽になるだろう。

 またALSを一からやるなら、私は日本に帰れるのではないか、という思いがよぎる。仕事が口を開けて待っているので、気が焦っている。私がいなければ事が進まない仕事のやり方は変えていきたかったのだが、決断決行となると、まだまだ私。新年から全面変えられるか、つまりは私の代わりをする人がいるか、部分的には代われても、責任も行動も全部引き請ける人はいない。だって、患者会の事務所に毎日出勤する人なんかいない。あけぼの会のように大きくなると、しっかりした大黒柱がいないと、世間に通用しない。

 たかが患者会されど患者会、なんだけど、継続は容易ではない。俵萌子さんが亡くなって、あの会はどうなるのだろう。会長が3年以上、家庭の事情で仕事半分しかしなくても平穏に続いている会はすごい。みながやさしい気持ちで私の困窮を支えてくれている。あけぼの会会員はみんな心あたたかくて、思いやり深い、愛情溢れる人たち、ありがとうね。

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