報告 小西洋子(あけぼの福岡代表)

日 時:2024年7月28日(日)13:00~16:20
会 場:アミカスホール(福岡市男女共同参画センター)
講 師:ワット隆子会長(あけぼの会)
    大野真司先生(相良病院・院長)
    光山昌珠先生(北九州市立医療センター・名誉院長・参与)
    黒木祥司先生(黒木クリニック・院長)
参 加:116名(会員64名、一般52名)

 連日の猛暑の中、コロナ禍を挟んで実に5年ぶりとなる医療講演会を、顧問の先生方とワット会長を講師にお招きして開催しました。

第1部は、ワット会長による『あけぼの会と45年』でスタート。あけぼの会を作りたいと考えたきっかけや目的、続けて来られた理由など、スライドを交えてお話しされました。「AKEBONO NEWS」やホームページでしかワット会長を知らなかった会員にも、パワフルで温かい言葉と思いが伝わったことでしょう。

大野先生による『未来の乳がん医療』では、2000年から約25年のご経験をもとに、乳がん医療が進歩してきた過程を、①局所療法、②全身療法、③ケア・社会の3分野、10年ごとに分けてお話しくださいました。2030年までの10年間は、最近増えてきた治療や現在行われている研究など、未来に期待できるものでした。また、Informed consent(説明と同意)からShared decision making(意思決定の共有)へ変わりつつあること、「患者が主体的に参加する未来のがん医療を創る」ことが大切という言葉が心に残りました。

光山昌珠先生による『乳がんのゲノム医療とは』では、コンパニオン診断とがん遺伝子パネル検査の違い、どのような検査を行い、どのように役立てるのか。検査はどこの病院で受けられるのか、費用はどの位かかり、保険を使えるのかなどをお話しくださいました。
 個別の遺伝子情報に基づいて患者さんに合った治療を検討するというゲノム医療ですが、遺伝子検査で提示された薬剤が国内未承認だったり、治験・臨床試験の参加条件に合わなかったり、いくつかの理由で治療に役立たないこともある。連携病院として、がんゲノム医療を行っているご経験を踏まえて、がんゲノム医療を受けられる施設の地域格差解消、検査情報と検査結果の伝え方、治療法に繋がらなかった場合の精神的なケア、反復検査の保険適用など、まだまだ解決すべき課題があるということでした。

黒木先生による『乳がん薬物療法のトピックス』では、まずは、ホルモンレセプター、Her2/neu、がん細胞の増殖速度(Ki-67)など初期治療を決めるための検査方法についてのお話で、初めての人でもわかり易かったと思います。その後のトピックスでは、内分泌治療、抗癌剤治療、抗HER2療法、免疫チェックポイント阻害剤、その他の分子標的治療について、新たに使用できるようになった治療法と有効性について、副作用や薬価を交えてお話しされました。いずれも高額で副作用も多いとのこと。このような薬剤を使わないで済むように、早期診断、早期治療が重要と強調されました。
――――――――
 いつも【あけぼの福岡】を応援してくださる先生方のお話は、少し難しい内容もありましたが、乳がん医療が日々進歩していることがよくわかり、治療中、治療前後の誰にも希望を与えてくださる内容でした。「今日を生きれば、また新しいお薬や治療法が開発されて使えるようになる」というメッセージをいただいた思いで、たくさんの元気が湧いてきました。
(田中眞紀先生は体調不良でご欠席、とっても残念でした。)

第2部のパネルディスカッションは、ワット会長の名司会で当日参加が目立っていた男性の方々に、治療に向き合う家族への思いや戸惑い、治療への疑問・質問などを話してもらい、先生方にお答えいただきました。ご家族の前で話すのは気恥ずかしかったと思いますが、今まで口に出していなかった思いも伝わったのではないでしょうか。
 治療中の奥様の代わりに参加されたご主人や、男性乳がんや遺伝子変異について知りたいとお一人で参加された男性もおられ、医療情報に関心を持つ方が増えたように感じたのと、会場全体がご主人がたのお話を歓迎し、熱心に耳を傾けていました。コロナ禍以降Web講演会が主流になっていましたが、対面での講演会の良さと必要性を感じました。 akebonofk@gmail.com

バナー広告

共同文化社

コム・クエスト