空飛ぶ美女、スチュワーデスという職業、見た目は優雅だが、何のことはない、緊急事故でもない限りは機内での食事サービスがメインの仕事だった。‘高級ウェイトレス’。何故あんなに憧れたのだろう。外国にただで行けるのが魅力だったし、人様の面倒を見る仕事は嫌いではなかったのだが、この職業、私には向いていなかったことがじきにわかった。
第一、私は女の世界は嫌いだったのだ。上下関係が厳しくて、古株が新参者を陰湿にいじめる。私なんか、いじめにあった最たる新参だった。それだけ態度がでかかったということなのだが、なんせ癪に障る存在だったらしい。私ってどこへ行ってもおとなしくしていない。目立つ。遠慮なく振舞ってしまう(それがトータルで、態度がでかいということ)。
でもね、あの時はじっと我慢したけど、成熟して、少しは有名になった今の私ならリベンジよ。道で会ったら、ただでは置かないから覚えておいてね。
第二にフライトの時間が私の生活パターンに合わなかった。夜明けの4時頃出発だと東京のアパートを夜中の12時にタクシーで出る。その前に仮眠をしようとしても無理で、結局前夜一睡もできずに次の日一日働くといった具合で、定時に寝るように決めていた私には苦痛だった。睡魔に勝てなくて、トイレの中で寝てしまい、ごっとんと機体が地面に着いて始めて目が醒めて、まさに字の通り、飛び起きて、泡食うことが何度かあった。
突然ですが、1960年代懐古節から2006年6月現実に戻って、息子からの便りを中継。
『 マミー、げんき?
6月19日(私の到着日)はヒースローへ必ず迎えに行く。その日は特別、予定は入っていないので、迎えに行っても問題ないから。空港までは‘空港エクスプレス’で行って、帰りは一緒にタクシーで家まで帰ればいい。(空港エクスプレスとはヒースロー空港からロンドン街中のパディントン駅までノンストップで走って30分、速いが高い。片道3000円)
ダディは少しずつ弱くなっていて、特に嚥下が難しくなっているけど、なんとかやっている。先日、ランプ(段差を埋める板)が届いたので、ここ2,3日電動車椅子で散歩に連れ出している。昨日はみんなでプリムローズヒルの急坂を登って降りて公園を通り抜けた。今日は買い物(自然食料品)をかねて2時間の散歩をした。ここのところ、こちらは好天、すごく気持のいい日が続いている。時に暑すぎるくらい。ダディは少し日焼けした。
ジェニファーは実は今オーストリアへ行っていて留守。国連関係の仕事を頼まれて行った。彼女には久しぶりの仕事なので、楽しんで、少し息抜きになってよかった。ダディには今まで通りストレッチや軽い運動をしてもらって、まだなんとかベッドから車椅子へ車椅子からトイレ用椅子への移動はホイストを使わないで、持ち上げてやっている。
いつでも電話して。こっちからもまた電話するけど。火曜日にはダディの旧友とランチを一緒にすることになっていて、楽しみ。昨夜はニューヨークからのニューマン夫妻といつものギリシャレストランへ行って、マミーの知っているいつものメニューをオーダーして、楽しい会食をした。ダディも楽しそうだった。では、もうすぐ会えるね。サンディ。 』