これだけ日英往復を重ねていればマイルが貯まりっぱなしだったのに、使い慣れていないので放っておいたら、なんと10万以上貯まっていて、その内の29,000が今年12月で有効期限が切れるという。なら、思い切って使おう、と気合入れて8万マイルも使ってビジネスクラスに乗ってやった。国際線のエコノミーとビジネスの階級差と来たら、新幹線の普通車とグリーンの違いなんかとは違う。天国と地獄、とまでは言わないが、天と地くらいは違う。お金はそこそこあればいい主義の私だが、このときばかりは金持ちが羨ましい。

 気分がよくて、くせになる。だってヤマモト(私の日本名)サマ、いつもご利用ありがとうございます、なんて始めにごあいさつがあって、ウエルカムシャンパンにオードブルがあって、和洋食どちらかフルコースのお食事に至るのです。でも悔しいことにアルコールはワイン1杯しかダメ、フルコースといっても量的に半分しか入らない、食後のゴーディバチョコなんてどうでもいい、よって元が取れない、ときている。本物の金持ちは飲食目当てに飛行機に乗ったりはしない、とかなんとか言って悔しさを紛らしている私。

 さて現実は地上のお話。このバカ高い家賃のマンション契約更新のこと。来年2月始めには切れるので新規に契約しなおさなければならない。考えると卒倒しそうな額を払っているが、他に行き場がないのが今の私たち。最初は6ヶ月の命と言われて、それが1年になって、今度は1年半になりそうな気配。私たちは流れ者一家なので、家賃は6ヶ月全額前払い、退去は2ヶ月前に通知することが条件。まとめて払っても6ヶ月より早く出ればその分は返却してくれるが、問題は彼の死をきっかり2ヶ月前に予知できないことである。

 もちろん、生きていてくれた方がうれしいが、膨大なお金がかかるので、合理的考えの彼は今度の契約が切れる前には死ぬと宣言していた。そうしてくれると助かる、と口まで出かかったが、私とて、はっきり頼んだわけではない。賃貸契約に合わせて死期を決めるなんて現実的過ぎるが、現実は厳しいので、実際問題として何とかしなければならない。子供たちにこんな話を持ち出しても聞いてくれない。後始末のお金だっているのだし、未亡人になる私にも少しは残しておいてもらわないと霞を食って生きていけというの?

 この小寒いイギリスに今、身も凍るニュースが話題になっている。売春婦5人連続殺人事件。容疑者が捕まった。スーパーマーケット店員で37歳、離婚暦あり。彼は5人の女たち全員と顔見知りで、内一人とは1年半も付き合っていたとか、この男、犯人に決まりだわ、とコロンボおばさんはテレビに釘付け、推理にのめりこんでいる。被害者は19から29歳、若い女の子ばかり。全員麻薬常習者だったらしい。この若さで女の子が真裸で道端や冷たい川淵に捨てられるような死に方をするなんて、親の心はどんなだろう。容疑者の自宅を捜査しているが、被害者の衣類が見つかっていない。(この項次回へつづく)

 時差で夜中12時起きだったのが、今朝は2時半まで寝た。数段の進歩。今7時、外は朝の小鳥のさえずりのみが聞こえる。すっかり葉っぱの落ちてしまった木枝の合間から薄明るいオレンジ色の朝焼けが静かに広がる。こうして一人いる私って一体何なのだろう。