カリフォルニアの澄み渡る青い空から、どんより冬空の日本に帰って、2週間になろうとしています。なかなか書けなくて遅くなりました。続けて愛読くださっているみなさん、お元気でしたか。私は時差のせいか、帰ってきてから疲れが出ています。休暇に行って、帰ってきて、行く前より疲れたのでは意味がないのであります。
早速、現実に戻り、電話相談に捕まっています。どっちにしてよいか、迷っている患者が後を絶たない。この人は温存手術をして、再発。その時点でなぜか余命が一年くらいと宣告される。ご主人が西洋医学を完全拒否、リンパ球療法を受ける。しかし病状更に悪化につき、今度は「血管塞栓術」を受ける。これが安くない。
一回30~40万円くらい。それでも命がかかっているので、夫は快く出してくれているから続けるのだという。この塞栓術の先生が、ハーセプチン治療も同時に受けたほうがよいというけれど、こんな患者を受け容れてくれる病院はないでしょうか、というのが相談の主旨。西洋医学と東洋医学の両方を同時進行できるか。理屈の上ではできます。しかし、問題は医師にあって、お互いが敬遠し合っている。
現に、この患者は訪ねていった医師に「あっちの先生にみてもらってください」と、けんもほろろに拒絶されたそうです。さて、どうしたものでしょう。今頃の患者は消費者感覚で、自分の必要なものだけ要求してもいいのではないか。「ごめんください。突然ですが、ハーセプチンだけ、こちらでおねがいしたいのですが」と言ったら「ハイハイ」とそれだけ切り売りしてくれてもよいのでは。
ただ、がん患者は自分が心から信頼できる医師を持っていないと、例えば、末期になって、どうしても専門家のお世話にならなければならなくなってから探しても遅過ぎる。人間関係は時間をかけて築きあげて初めて固い絆となるからなのです。心から信頼してくれている患者に対しては医者も期待に添うよう努力してくれるでしょう。そんなものなのです。反対に、掛け持ちしていることが見え見えだと、どうしても力半分しか入れたくなくなるでしょう。
それにしても一回30万もする療法が絶対効くという証拠はどこにあるのでしょう。治療は2ヶ月に一度の割ですが、それでも大きなお金ですよね。実は会員が昔これを受けていて、少し持ち直したように見えたのですが、間もなく亡くなってしまった。ですから、私はどうしても懐疑的になってしまう。でも抗がん剤で完治するという保証もどこにもないわけで、それを言われると反論できなくなります。
がん患者に迷いは付きもの。答えるほうも迷っています。むずかしい質問が多すぎる。でもそれだけ複雑になっているのが、今のがん世界ともいえます。「主治医に聞いてみてくださいよ」とこっちが、けんもほろろに答えたりして修行が足りません。でも、毎週土曜日11時~3時まで電話相談員が電話の前で待機していますよ。