昨日、10月23日、今年に入って5度目の大英帝国入り、毎度のことだが、税関で何のために来たのかと聞かれて「夫がこの国で死にかけているので看取りにきた」と答える。何でも簡潔明瞭に伝えれば話が早い。ナニナニ病でどうのこうのと税関員に聞いてもらうのは酷というもの。ただでさえインド人かパキスタン人か、あの系統一族かたまって、難問答でなかなか通せないでいる。日本人でも何を聞かれているのか全くわからない人がたまにいる。質問は基本的に「来英目的と滞在期間」と決まっているのだから、英語で紙に書いて持ってくればいいのだ。そして、後ろに待っている同国人の私を早く通してくれ。
死にかけているはずの夫はその頃、子供たちとなんとスコットランドへ向かっていた。22日に出て、その日の内には目的地まで着かなかったらしく、昨日娘が電話くれたときは「もうじきエジンバラ」だった。にわか長距離運転手の息子は緊張しているだろう。向こうへ着いてから車があったほうが動きやすいという理由で、あの家族騒動を引き起こした車で出かけたのだが、全員揃って五体満足で戻ってくるのか、思うに恐ろしい。やることが向こう見ず。しかし、人間の生き死には、すべからく運命、ハイウエイで事故るならそれはもう決まっていること。だから案じるのはよそう。
誰もいないのに私も無理して来ることはなかった。何せ、前日の22日は神戸の出番で日帰り出張。朝日新聞主催「ピンクリボンフェスティバル関西版」であの大空真弓さんと対談した。やはり美しい人は見ているだけでうれしくなる。おまけに太っ腹で出たとこ勝負型の生きかたが楽しい。でもこれをドタキャンしてイギリスに戻ることを内心考えていた。夫の誕生日、10月15日にここにいたかったからだった。おそらく最後の誕生日、しかも70の古希、友人が集まってくれることになっていたので私だって参加したかったのよ。
でも私の約束ごとは社会的責任だからそう簡単にポイ破棄はできないのだ――なんて、言ってみただけ。だって、このあと11月18日と12月2日の出番を今度こそすっぽかすつもりで、理由探しに要らぬ頭を使っていた私。「もうこれ以上、日英往復は面倒でいや、今回は少しじっとしてここにいたい」これが本音。でも、ウソはやめた。依頼を受けてひとたび承諾したことは守る人にならなければね。ただ、韓国だけはキャンセルして行かなかった。ごめん。これは今となっては潔い決断だった。だって、私一人遊んでいる場合ではないんだもの。これに気付いた私はエライ。来年は事務局スタッフ全員で行こうね。
今回の帰国は連日忙しかったので、イギリスに戻って、今始めて解放された気分でいる。あけぼの会の秋の大会、日本のみなさまのおかげで盛会のうちに終わりました。前日の広告を見て駆けつけてくれた人がいたとしたら、この場でお礼を申し上げます。あなたの参加で634席ほぼ満杯、私も十分燃えました。調子に乗って燃え尽きてしまい、終いには立っているのがようやく。心配かけました。でも言わせてもらえば、惚れ惚れするようなよい内容の大会だった。あの雰囲気は病みつきになるでしょう。だから、会長やめられない?
27日まで住人は戻ってこないので、お留守番の私はゆっくり時差調整に入ります。