23日午後3時、予定通りヒースロー空港の上まで来たのに、濃霧のために着陸が混雑していて、ただ今から空中旋回して着順を待ちます、というアナウンス。飛行機って超速で飛んでいるから落ちないのだ、と理解している私には旋回は怖い。ガス欠になったらどうしよう。地上温度は2度。機内、今回は何故か子供連れが多くて、うるさいガキャー大嫌いの私は参ってしまった。特にすぐ前の列には雲をつくような大柄ママが5歳以下の女の子を3人も連れて四人席を陣取っている。右斜め後方にも男の子連れが一組いて気になる。

 ずっと昔、私も子連れ空中旅をしたのだから、もっと寛容な理解の仕方もあるはずなのに、他人の子は見るのもいや。だから言っておきますが、私に孫の写真なんか見せないで。犬猫ペット写真もいや。人間もっと他にする事があるはずなのに、人はなぜ身内やペットの写真なんか赤の他人に見せたがるのか、気が知れないと思わない?とにかく飛行機は無事地上に降りて、空港で息子と1ヶ月ぶりの再会、お互い少々やつれ気味。一寸先も見えない濃霧の高速道路を漕いで車は家路を行く。一寸先も見えないなんて、まさに私の人生。

 イギリスにまた舞い戻ったか、という無感動の感動。パスポートをめくって、今年はいついつ来たのか、調べてみたい気もあるが、知ると疲れがどっと滲み出る気がして見たくない。思えば、30時間前、私は埼玉県東毛呂の埼玉国際医療センターにいた。想像以上に近代的病院で、山中に突如未来都市現る。
私の敬愛するオンコロジスト佐々木康綱教授が夢に見た理想の施設、ほんの15分程度だったが、施設の一部を案内してくれた先生の表情を見せてあげたかった。ここで治療を受ける患者は死んでも文句は言うまい、そんな印象。

 日本の一ヶ月はひたすら仕事、私ってがん性格を十分備えている。働いてばかり、気苦労ばかり、恥ずかしいがこれといって趣味もなくて、仕事がこれ生き甲斐、楽しむことを知らない。でもこんな人生、不幸だとか間尺に合わないとか、は思っていない。
私の仕事は決してマンネリではなく、いつも新しく
挑戦、だから、やりがいあり達成感あり。それと常に人との交わり、これが無常の喜び。それと会長さんは人に指図されることもなし、正規の給料をもらっているわけではないので、人に頭を下げることもない、潔く心地よい。

 夫はいつものように相好を崩して、うれし泣き顔をする。早速、総重量33キロだったスーツケース2個から日本食料品を出し並べて、ケースを空にする。孫のリラには「ディズニーのプリンセスブック」が定番。今回遂にスーツケースを新調した。サイドの取っ手なんかとっくにもげてしまっていたところへ、コーナーの布地がはがれて針金がのぞき始めた。ど派手メタリックの紫がほしかったのだが、両面に詰めて両方から合わせ閉じるのは力が要るのでやめ。今までと同じ黒のキャンバス地のにした。ドイツ製、2万3千円、高い。

 24日、混雑を絵に描いたようなスーパーの中で、大人一人座れるバカでかのスーパーのカートをぶつけ合いながら山盛りの買い物をしている。クリスマス前日のショッピング風景。25日にはすべてのお店が閉まる。そして、なんと交通機関は全面ストップという徹底振り。
日本はいつの間にか元旦にもスーパーが開いてしまうという節操のなさなのに、ここは根底に宗教心があるからだろうか。今年のターキーは去年の半分のサイズにした。