報告:あけぼの会副会長 川野紀子 akebonohyogo@gaea.ocn.ne.jp
日時:7月11日(木)~7月13日(土)
会場:仙台国際会議場・東北大学百周年記念会館
◆患者にやさしく、おもてなしあふれる学会だった
仙台国際会議場と隣接する東北大学百周年記念会館で行われた乳癌学会に【あけぼの会】の会員さんと参加してきました。会場は仙台城址にあり、青葉区と言われるだけあって緑が美しかったです。
今回は学会長の石田孝宣先生や東北大学の関係者の皆さんのご厚意により、患者にもとても配慮して下さった学会でした。本来なら参加できない企業主催のモーニングセミナー、ランチョンセミナー、イブニングセミナーの一部を患者にも開放して下さって、お弁当の提供もありました。また全員交流会にも参加させていただき、東北各地のお酒や旨いもんの数々を戴きながら、著名な先生方とも楽しくお話をする機会を作って下さいました。
◆充実していたBC-PAP(Breast Cancer Patients and Advocates Program)だった
今年のBC-PAPは、ちょっとハイレベルでしたが、とても充実していました。いろいろな角度から乳がんにアプローチしたセッションでプログラムが構成されていたので、どのレクチャーも気が抜けませんでした。
ヘルスリテラシーを実践するためには患者もしっかりと勉強しなければいけないと痛感しました。また初の試みで、グループに分かれて話し合うワークショップもあり参加した患者の一人一人の思いや意見が形になってまとめられたのも、とても意義があり良かったと思いました。
質問コーナーやパネルディスカッションでは、みんなの熱い想いで会場が盛り上がって心が一つになった場面が多くありました。
◆日々進化する乳がん治療
乳がん治療の世界では、今年のトピックが翌年には、もう標準治療になっているという現実があると患者には希望の持てる心強いお話がありました。エンハーツはHER2が低発現の人にも使えて効果が出ているとのことなので、HER2が低発現でトリプルネガティブに分類された人の中でも使える人がたくさん出て来たとのこと。
またホルモン受容体陽性・HER2陰性の再発乳がんの新薬トルカプ(カピバセルチブ)が承認され使えるようになった話や、間もなく承認される薬剤も3剤ほどある話も聞きました。
ひと昔前は再発したら延命治療と言われていましたが、今はいい薬剤が次々に出て来ているので積極的に治療しに行く時代になってきたと思いました。
その他にも働く人のニーズに応えた時間短縮の注射の抗がん剤フェスゴや、切らずにがんを治すラジオ波焼灼治療の話も聞きました。数年後には乳房を切らずに治せる時代がやって来るのだと思いました。
◆乳がん治療は本人の生き方・家族の在り方、そのものが問われる
「臨床試験と意思決定」のワークショップではAYA世代で乳がんを発症して、術後何年も薬物療法をしていると挙児が望めなくなる場合が多い。そこで2年でホルモン治療を中断して妊活、出産を終えてから再度ホルモン治療を再開するという臨床試験が行われていると研究者から説明を受けた。
患者パネリスト・男女の乳腺専門医が会場を巻き込んで意見を出し合った。ホルモン治療を中断する勇気、母親は子供が成人するまで生きられる保証はない。研究者からはいくつかの実例が出ました。これからの乳がん治療での意思決定は、本人の生き方はもちろんのこと家族の在り方そのものが問われる内容で心が震え感銘を受けました。
◆乳癌学会と日本腫瘍循環器学会合同シンポジウム
本大会では、乳癌学会と日本腫瘍循環器学会合同シンポジウムもあり、乳がん患者の心機能保護をテーマに、乳癌治療医と循環器専門医が連携して、私たちの心臓を癌治療から守るため、チームで取り組みの話をしてもらいました。
抗がん剤の副作用のよる心毒性や放射線治療で受ける心臓のダメージをより軽減する取り組みや長期にわたる心機能のフォローアップの取り組みは本当に必要で大切なことだと思いました。