昨日は日曜日、息子が車を出してくれてスーパーマーケットへ1週間分の食料買出しに出かけた。日本と同じで、入口で今週の目玉品が積まれてある。ワイン6本入り、ケースで買うと25%引き、1本が4ポンド見当、これを買わない手はない。がぶ飲みできる。その後ろにトイレットペーパー12個入り大袋がセール、取ってカートに入れた。でも一体いくらか?と、その時、一人のかわいい東洋人が私に聞いてきた。「これはいくらなんですか」流暢な英語。そこで私も流暢に「わからないのよねー」と答えて彼女の顔を見た。

 「ところで、あなたは韓国人?」かわい子ちゃんに聞いた。「いえ、ジャパニーズです」「えっ、私もそうなのよ」「あら、すみません」お互い英語でやり取りしたのがおかしくて同時に笑った。「私、日本人に見えない?」「いえ・・、その・・、こんな色なので・・・」申し訳なさそうに答える。私が着ていた、のけぞりそうなショッキングピンクのスキージャケットに驚いたのだ。正直、街中で着て歩くにはちょっとした覚悟が要る。こっちこそアンニヨハセヨか、香港ママに見えたに違いない。「ねえ、あなたの電話番号ちょうだい、私のもあげるから」こうしてやっと一人、自力で日本人の知り合いを開拓した。

 別にどこの国の人でもいいのだけど、こっちに来て、一番さみしいのは電話でおしゃべりできる相手がミヨコさん一人くらいしかいなくて、彼女は最近孫が出来て忙しくて、以前のように私に付き合っていられなくなったし。日本に帰れば4000の朋友がいるというのに、なんだ、この大差は。今度の帰国は11月27日、そして、12月20日にはまたこっちに飛んで戻る切符も買ってある。でもね、イギリスはほとほと面倒になってきた。

 娘がこの土曜日から1週間ニューヨークへ行く段取りをしている。ヘルパーもナースもドクターも、みなが彼女を頼りにして、わからない事はみな「ジェニィに聞け」。勿論、病人も彼女がいれば、人が変わったように安心している。それは彼女の肩に一番負担がかかっていることでもある。だから、ここから遠ざかって骨休めしてくるのはみなが賛成。でもそれは私がここにいて少しでも役に立つから実現される。息子も、次回、マミーが来たら、俺、日本へ行くか、なんて言い出している。逃げたい私を頼りにしないでくれ。

 夫の友人が訪ねてくれた。どしゃ降りの雨の中を傘もささないで来たので、帽子もコートもびしょびしょ。イギリス人は雨に打たれるのは平気だ。天気予報が「雨が降ったり止んだりなので、今日は折り畳み傘を持って行ったほうがいい」などと傘、傘と騒ぐ日本人と大違い。体をぬらすと風邪を引く、という昔からの教えのせいだろう。とにかく彼は着くやいなや桐の小箱から焼き物を出して夫に見せる。「益子焼だ、覚えているだろ?一緒に行ったね」高そうなその一品を夫にくれるというのか、と思わず金勘定してしまった私。

 次いで、写真を数点ノートパソコンに入れて、パソコンを夫の顔まで持っていって、見せる。「ほら、あの時、田んぼに入って田植えをしただろ?」連れの外人女性がスカートをはいて田んぼに入っている写真。終日ボオーっと座ったままの病人に、少しでも気分昂揚してほしいと躍起になって、こんなにまでしてくれる。ありがたい。真の、男の友情。