昨日、今年2月に入会したばかりの神奈川県の会員さまに「退会のおねがい状」を出しました。通常、この種の「おねがい」は会員のほうから来るものなのですが、今回はこちらから「おやめいただきたい」と丁重に勧告いたしたのです。そこはその、我が社は任意団体で、善意のみで成り立っている団体なので、理事会にはかることもなく、(会長の一存で)最終決定ができるのであります。

 この人はまず何のために入会してきたのか、目的がわからない。がん患者会に入会するには一つ二つの目的があるはず。例えば、「がんのショックから立ち直るため」「再発の不安を少しでも軽くしたい」「治療法などの情報がほしい」そして、「同じ体験者と話がしたい、みながどのように病気と対処して日常生活を続けているのか知りたい」といった前向きの動機です。

 あけぼの会がこれらのニーズにこたえるよう日夜努力している会であることは十分謳ってあります。それなのに、この人は一方的に文句ばかり言って駄々をこねている。体力も気力も、事務局スタッフの数倍はある。私たちは一日一日の仕事をこなすことで精一杯、余力はありません。だって、こんな人の電話に答えるのも、元はといえば同じ病気の体験者、中には再発して、抗がん剤治療中の人もいるのです。

 この手の人は大体(独身で?)職業婦人か、かつてそうであって、「ただの主婦ではないのよ」とおっしゃりたいタイプ。現にこの人は「私はちょっとしたあれなのよ」と、ただの人ではないことを強調する。いわば、患者会のボランティアなど、みな(ひまな)主婦族だとなめてかかっておられる。ただの主婦の手で、これだけ濃度の濃い活動を続けていることこそ、脅威ではありませんか、ね、みなさん。

 がん患者会は「がん」という一つの共通項で繋がれているだけで、学歴、職歴、お金持ち、お住まい、夫のお職業、などなどとは全く無関係の世界なのでございます。こういう人に「あなたは患者会がどのようにして運営されているかご存知なの」とか「あなたは人に感謝する気持ちを少しはお持ちなの」などと聞くほうが野暮というもの。そのうえ、「お金を返してくれればすぐにやめてもいい、他にも乳がんの会はあることだし」と恐喝的せりふ。

 それで、入会金+年会費の5,500円そっくりお返しいたして、身を退いていただきました。が、これですんなり行くとは思えません。明日からはスタッフ一同、電話が鳴るたびに恐怖で縮み上がる日々が続くことになります。しかし、それでも、この人の電話攻勢に痛めつけられた神奈川県支部長と事務局スタッフの名誉と魂を救済し、これ以上のダメージから守ってあげる責務があります。文句あるなら、私を先に刺してからにしてよ、なんて、一つしかない命を武士道人生に捧げる覚悟。

 それにしても、生きるか死ぬかのがん体験をしたら、どんな人も一皮剥けて、清い心に気付かされると思ったのは一昔前の話。最近はがんも軽くなりましたです。