私は今、10月の秋の大会プログラムの中身を煮詰めています。 全国大会は毎年、有楽町マリオンの朝日ホールに決めてあるので、大会終了直後、翌年の予約を入れる手際のよさ。というのも、あそこは、かっきり一年先に予約しないと取れなくなるほど人気の会場なのです。今年は10月3日、日曜日でございます。

 昨年は記念すべき25周年大会だったので、全国的に張り切ったのでしたが、今年は肩の力を全部抜いて‘内輪の集まり’にしたいと思っています。もうここまで来れば、世間に対して、いい恰好しなくていいのですよ、会長さん。たとえ、会場が満杯にならなくても、ご来場のみなさんが秋の一日を大いに楽しんでリラックスしてくだされば至福でございます。なんという平和な‘心のゆとり’。

 おかしなことに、今から13年前にあの会場を借り始めたころは、あくる年の予約を入れることが出来なかった。というのは、一年先、私がどうなっているか、会が健在なのか、予測ができなかったからです。そんなあるとき、ふと思ったのは取り敢えず会場は抑えておいて、もし私の身に何かあれば、会長さんを偲ぶ会にしてもらえばいい、と。

 この思いつきが妙に受けて、永六輔さんなんか大喜び。偲ぶ会の会長はぼくに任せて、と嬉々としておっしゃる。永さんは毎年、あけぼの会・秋の大会に顔を出してくださる常連さま。天下の永六輔をアゴで使うワットさんとは、げに恐ろしき人。いずれにしても、そんな理由で、一年先の会場確保に迷いは無くなっている。

 がんという病気をすると、一寸先の予定も立てられない時期があります。自分の体調に自信がないので将来の約束はためらってしまう。そして、人に迷惑かけることになっては悪いから、と超日本人的セリフを必ず言い添える。これがもどかしい。

 どうなるかわからない、だからこそ、予約して希望をつなぐ。あとがないかも知れないのだから、先ずは、やることに決める。そして、時が来て、もし出来なくなったとしたら、できないだけのこと。

 がんをしていなくてもドタキャンという言葉があるくらいなのだから、土壇場でキャンセルすればいい。出来ないかもしれない、この不確かさに呪縛されてはダメ。「迷惑かけるかも」というけど、元気な人はそんな迷惑はなんとも思わない。どんな人もそのくらいは理解ある人間でありたいと願っているものなのです。だって、自分が元気側に立てば、そうでしょ。

 ずっと前、会でシンガポールへ旅行したとき、埼玉の一会員は末期の辛い状態だった。でも、初めてのパスポートを取って、出発前は毎日それを眺めて、未知の外国を想像する日々だったとか。でも実際にホテルに着いた時は咳き込んで、ベッドに横になって寝られなかったほどだったそう。それでも最後の力を振り絞って夢をかなえた。それこそが彼女の生きざまだったのだ、と今になって回想している。