「医療は人の幸せのためにある」と仰る唐澤先生と神奈川スタッフ「医療は人の幸せのためにある」と仰る唐澤先生(下段中央)と神奈川スタッフ(上段中央・牧野代表)

去る9/12(日)、<秋のあけぼの神奈川医療講演会>をオンラインで開催。講師は唐澤久美子先生(東京女子医科大学放射線腫瘍学教授)、世界で初めて乳がんで重粒子線治療を行ったドクターです。タイトルは「乳がんの放射線治療~最新情報を含めて」。世界のがん患者の半数以上が放射線を使って治療をしている中、日本ではまだ3割以下というお話から、日本と欧米との違いや問題点なども話してくださいました。 参加者は43名(あけぼの神奈川会員+全国のあけぼのネットワーク会員)。

温存手術後の放射線治療
乳がんの温存手術後の補助療法としては通常25回の放射線治療が行われていますが、寡分割照射(短期照射)という1回の線量を増やして、回数を15~20回に減らす方法があります。この方法だと治療期間が短縮され、費用も安く、皮膚炎が軽度で済むことも多く、その上効果は同じ、と患者にとって良いこと尽くめなのです。日本のガイドラインにも取り入れられ国内でもこの方法を行っている病院もありますが、保険の点数が低い(寡分割照射法加算はあるけれど)ため病院の収入が減ってしまい、なかなか広がらないとのことでした。
温存(部分切除)手術+放射線治療にするか、全摘手術にするかを選択する場合、放射線治療に5~6週間も毎日(月~金)通院することを考えると、仕事や家庭の事情でやむなく全摘手術を選択する人がいます。手術後や抗がん剤治療後に暑い日、寒い日、雨の日でも休みなく毎日通院なので、きつかったという話も聞きます。一日も早く、患者にやさしい寡分割照射をみんなが受けられるよう強く望みます。患者からも声を上げることが必要かもしれません。 
諸外国では寡分割照射が標準とのことですが、最新トピックスとして、5回照射(5日間)と標準の15回照射を比べたイギリスの臨床研究の紹介があり、5回照射は劣っていなかったそうです。5日間で済むなら負担は更に大きく減ります。
瘍が小さい場合(条件あり)は5日間の加速乳房部分照射で十分であり、米国では実臨床に取り入れられて久しいのに、日本ではいまだに全例に全乳房照射をしているとのお話もショックでした。
後日、参加者(ナース)から「コロナで通院回数が増える放射線は嫌だから全摘にする」などの考えがある現状を聞き、特に今は通院回数が少なければありがたい、と思いました。患者も寡分割照射や部分照射という方法もあることを知っておきたいものです。

放射線治療スタッフ不足
日本は放射線治療施設数は少なくないし粒子線治療施設は多いけれども、スタッフが不足していて地域格差があることが問題だそうです。放射線治療はチーム医療で行われますが、放射線治療専門医が少なく、高精度な治療をするために欠かせない医学物理士も少ない。放射線技師は5万人いても治療専門放射線技師は1500人しかいないとのこと。良い放射線治療施設とは、スタッフの揃った日本放射線腫瘍学会の認定施設だそうです。

―――Zoomによるオンラインでの講演会の開催は初めてでしたが、遠隔地からも、体調が悪いなど出かけることが難しい方も参加出来ること、講演のスライドを手元ではっきり見られることなどが好評でした。コロナが収束してもオンラインの講演会をやって欲しいとの声もあり、今後も開催しても良いかもしれないと感じました。 akebonokanagawa@gmail.com