世紀の名演説!!<br>大野真司先生・第31回日本乳癌学会会長<br>(がん研有明病院副院長/乳腺センター長)世紀の名演説!!
大野真司先生・第31回日本乳癌学会会長
(がん研有明病院副院長/乳腺センター長)
乳癌学会に参加して、今年は一段とBC-PAPセッションの内容がレベルアップしていました。そして参加されたみなさんは患者力が高く疑問に思ったことはきちんと質問をして、意見を求められたらはっきりと答える。とても刺激を受けました。最初、乳がんの最新治療を学ぶことしか頭になかったのですが、いろいろと勉強していく内に、患者として考えていかなければならない大切なことが他に沢山あることに気付かせてもらった学会でした。

今回の学会では、本来なら患者は参加できないランチョンセミナーやイブニングセミナー・Meet The Expertの一部を大会会長の大野先生のご厚意で開放して下さり情報を増やす機会を与えていただきました。これには心から感謝したいと思います。

 

<本当に素晴らしかった会長講演>「今輝き、未来を拓く」に感動!
先生は、食道がんの患者さんを診ておられて腕のいい外科医として難しい手術に明け暮れておられた。ある時、恩師である教授から「九州がんセンター乳腺科の責任者として頑張って欲しい」と言われた。当時はマイナーだった乳腺科に行くことに悩んでいたら、先輩から「これからは乳腺の時代だ」と励まされて決意されたこと、そしていろんなところに出向いて行って乳がんの知識を得て、乳がんを診ることになった経緯をお話しされました。
 食道がんの患者さんは、先生が手術の話をすると、すぐに同意して問題は起こらなかった。しかし乳がん患者さんを診るようになって、一筋縄ではいかなくなった。「だからね。だからね」と説明をくり返しても患者さんはうわの空、ある時、患者さんの口からぼそっと出た言葉に衝撃を受けた。「先生、子供の卒業式に出てやりたいです。そして入学式にも行ってやりたい。だから手術の日を先に延ばしていただけませんか」
 今まで病気は診てきたけれど、患者さん本人やその背景を見ていなかったことに気が付いて、病院中の他職種のスタッフに声をかけて、自分たちの部署で患者さんにできることを書き出してもらって表にまとめて患者さんに「私達はこんなことを支援できます」と伝え、そして「チーム医療」を確立された。    
 時折、先生が言葉に詰まられる場面があり、こちらも涙が出そうになりました。講演が終わってもしばらく会場に響き渡る拍手が続きました。先生の今後のご活躍を患者の立場で応援していきたいと思いました。