2005年2月ステージⅠの左乳がん温存手術、術後25回の放射線治療後、ホルモン治療剤内服にもかかわらず3年弱で再発。以来、沢山の抗がん剤にお世話になってきた。今、私がこうして曲がりなりにも元気で日々を送ることが出来ているのは、これら抗がん剤のおかげであることは疑う余地もない。以下、その経緯の詳細を記す。

術後補助療法でノルバデックス(経口)を内服中、2008年1月両肺多発転移、多発骨(胸骨、鎖骨)転移、縦隔リンパ節転移、局所再発の診断を受けた。以降、再発治療7年半の間に使用した薬は以下の通りである。(〈 〉は投与回数又は内服期間、*は現在使用中の治療薬)

Ⅰ.ホルモン治療薬
●経口4種類(フェマーラ+ナサニール点鼻〈5カ月〉、アロマシン〈4カ月+1年3カ月〉、ヒスロンH〈3カ月〉、フェアストン〈3カ月〉)
●注射1種類(フェソロデックス〈14回〉)

Ⅱ.骨転移抑制治療薬
●点滴1種類(ゾメタ〈81回〉)
●注射1種類(*分子標的治療薬ランマーク〈現在迄8回〉)

Ⅲ.抗HER2分子標的治療薬
●点滴2種類(ハーセプチン〈173回〉、*カドサイラ(T-DM1)〈現在迄5回〉、経口1種類(タイケルブ〈1年1カ月〉)

Ⅳ.狭義の抗がん剤
●点滴3種類(タキソテール〈6回〉、ナベルビン〈31クール(62回相当)〉、EC〈4回〉)、経口1種類(ゼローダ〈10日間〉)

これが多いのか少ないのか分からない。ホルモン陽性、HER2強陽性のトリプルポジティヴなので使える薬は多い。けれど、この7年半の間、無治療でいられた期間は1カ月として、ない。さらに画像上の影が消えて寛解したことも、ない。合計14種類以上の薬のお世話になっていることを見れば、そうそう楽な時間が過ごせたわけではないことはお判り頂けるのではないだろうか。副作用で緊急入院も余儀なくされたし、休職もした。
 哀しいかな、どの薬もそう長く効き続けるわけではない。1年単位で時間が稼げれば万々歳である。最初のうちはまだ身体も元気だし、抗がん剤も効きやすい。けれど、年を経るにつれ、身体へのダメージは否応なく蓄積されていく。他方、がん細胞は耐性をつけてしぶとくなっていく。だから毎度毎度シャープに効いてくれるわけでもない。

再発治療開始以来、“完治はない”ことを受け容れて、完全奏功、部分奏功を祈るよりも先ずは不変に持ち込み、今の生活が少しでも長く続けられることを目標にしている。

まだ使っていない抗がん剤が何種類もあるから、まだまだでしょう、と言われるかもしれない。けれど、今、使っている新薬カドサイラが効かないのに、古くからある薬が劇的に奏功するとは思えない。奏功するメリットよりも、身体のダメージというデメリットが大きくなっていくことも想定内だ。骨髄がいつまで持つか、肝腎心の各臓器の機能障害もいつまで出ないで済むか、そのせめぎ合いだ。現在使用中のカドサイラに耐性が付けば、望みを持てる薬は抗HER2分子標的治療薬のパージェタだけ。この後、この2つの薬でどの位、命を繋げるだろうというのが今の正直な気持ちである。(2015.5.23記)