PAPラウンジで出遭った人たちと記念に
後列右端:清水美紀さん(あけぼの兵庫)
 〃 中央:川野紀子( 〃   代表)

報告:川野紀子(副会長・あけぼの兵庫代表)    

 

日時:2024年8月3日(土)~4日(日)
会場:アクリエひめじ

――今年の日本乳癌学会学術総会(仙台)で一部、腫瘍循環器学会とのコラボセッションがあり、患者が体験談や先生方の講演の感想等を特別発言されたことで、乳がん治療と心毒性は切り離せない問題だと痛感しましたので、この学会のPAP(Patient Advocate Program)に参加して来ました。今年から、がん患者・サバイバー・家族・一般市民に向けたプログラムも企画して下さり学会参加が可能になりました。

◆腫瘍循環器学はがんと循環器を扱う新しい医学領域
 今年で7回目、多くの抗がん剤が開発されて来た昨今、これらの薬物はがん治療には有効だが循環器系の合併症を引き起こすため、腫瘍循環器科の重要性が増して来た。そして、がん治療医と腫瘍循環器科の先生方の連携が非常に大切で、いかにして患者の命を守ることができるかを熱く語られていました。

◆清水千佳子先生がPAPシンポジウムを担当され座長&演者 
 PAPシンポジウムは「がん治療における腫瘍循環器とは?」というテーマで、佐瀬一洋先生(順天堂大学大学院医学研究科臨床薬理学)が循環器領域の立場から、そして清水千佳子先生(国立国際医療研究センター病院 がん総合診療センター/乳腺・腫瘍内科)が、がん治療医の立場から講演をされました。医師も患者もがんを治すということに夢中だけれど、がん治療の「益」と「害」を、がん患者の循環器の問題として考えていかなければならないと言われていました。

◆登壇者の多くが乳腺を専門に見ておられる先生方だった
 抗がん剤治療では女性の方が男性よりも心毒性の割合が多い。乳がんはサブタイプで治療が決まっていて、多くの薬剤が使えて他のがんに比べて心毒性のデータが多い。乳がん治療で多く使われているアンスラサイクリンの心毒性はよく知られているが、タキサン系抗がん剤でもアレルギー反応や過敏症状が心拍数や血圧に影響を与える場合がある。
 トラスツズマブは、心不全や心筋機能低下を引き起こすこともある。最近注目を浴びている免疫チェックポイント阻害剤は、がんにはとても有効な薬剤ではあるが、心筋炎を起こすことがあり、死に至ることもある。比較的副作用が少ないと言われているホルモン治療でも、タモキシフェン使用に関しては、静脈血栓塞栓症や肺塞栓症のリスクが増加する。それらを踏まえて、腫瘍循環器の医師がしっかりフォローして下さるそうです。

◆心毒性も早期発見・早期治療が大切 
心毒性と言っても投与する抗がん剤によって症状が違う。心毒性のリスクのある抗がん剤を投与する時は、事前に心エコーとか心電図などを取り、モニタリングしている。術後もフォローアップしていく。
 オーバーカム試験で腫瘍循環器の医師が早期介入することが重要で、異変の早期発見で休薬や適切な心臓保護薬投与で7割が改善する。また治療が完全に終わり、がんサバイバーになっても、心機能に異常を感じたら、すぐに医師の診察を受けること、その時にはがん治療を受けたこと、治療で使った薬剤名や投与量を伝えるようにすると良い。

◆その他に聴講したシンポジウム
・小児・AYAのがんサバイバーの長期フォローアップと循環器医療の関わり
・高齢者のがん治療、老齢腫瘍循環器学の重要性
・腫瘍循環器領域におけるドラグ・ラグやドラグ・ロスの問題

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