滋賀医科大学で合同授業をしました(2019/5/23)滋賀医科大学で合同授業をしました(2019/5/23)
 滋賀医科大学は地域医療を担う医師・看護師の育成をめざす地域参加型支援事業「地域『里親』学生支援事業」を行っています。6年前、室長である教授から話しをする機会を頂いたことがきっかけで、医学概論Ⅰの講師としてもお声をかけていただくようになり、先週、医学科と看護学科の1年生約160名のみなさんに講義をしました。講師には地域で在宅医療をされている医師、障害施設の室長、海外で医療活動をされた小児科医、社会福祉協議会の職員、そして、がん患者会代表の私など多岐に亘っています。

 講義のテーマは「がん患者の視点から将来の医師、看護師に望むこと」で、5年間変っていません。自己紹介から始めて、37歳で乳がん手術、41歳で再発、この再発を契機にがん患者である自分を受け容れていった心境など自分自身のことを話し、そのあと、患者はどのようにがん治療と向き合っているか、看護師さんとの良い思い出、悪い思い出、現代のがん患者を取り巻く状況と問題点、患者会や院内がん患者サロンでの患者や家族の姿や声など患者会代表として見聞きしたことを話して、最後は「将来の医師,看護師に望むこと、伝えたいこと」で結びます。

 私が病院や医師をどう選んだのか?決め手となったある医師の言葉を紹介します。「僕の妻がもし再発して命がなくなっても、あの医師なら悔いはない」 

 私の主治医はあけぼの会発足当初、京都支部の顧問医でした。思いがけずに再発とわかったとき、「長く生きたい」という思いと、「主治医に命を任せていいのだろうか…」という不信感に襲われました。誰もが持つ願望と疑問だったと思います。そして初めて、主治医に今の状態とこれからのことをお聞きしました。すると、紙に丁寧に書いて説明してくださったので、その瞬間、「私だけの主治医になってください」と、今思うと恥ずかしいお願いをしてしまいました。先生は「一緒に頑張りましょうね」と私の目をしっかり見て、そう言ってくださいました。
 
 それからは、疑問や不安、何でも話すことができ、先生も答えてくださいました。「この先生に再び私の命を任せよう、たとえ治療がうまくいかなくてもこの先生となら最後までやっていける」と思いました。初めて主治医に真剣に向き合えた瞬間でした。

 患者と医師の信頼関係は時間をかけて築いていくものだと思います。それは、人と人との信頼関係となっていくものでもあります。長い闘病の中で、たとえ治らなくても、最後に、心から「ありがとうございました」とお礼を言いたい、と患者が思えるような医療者になってください、で講義を終えました。  菊井津多子  kikui@crux.ocn.ne.jp