「少し前の写真ですが・・・」と<br>ご自分が仰っています「少し前の写真ですが・・・」と
ご自分が仰っています
Introduction
 私は生まれ育った浜松市で、祖父、父の後を継いで17年前に(腫瘍)内科医として「浜松オンコロジーセンター」という名称で診療所をバージョンアップしました。乳がん診療を中心に「街角がん診療」をキャッチフレーズに、検診、診断、早期全身治療、そして、再発後の治療、また、終末期診療まで取り組んでいます。更には水虫から、コロナウイルスワクチン接種など、幅広く、奥行き深く、診療しています。

乳がん診療における最近の取り組み
最近では「早期全身治療」に積極的に取り組んでいます。一般的には「ネオアジュバント・セラピー:術前補助療法」と呼ばれますが、そもそもアジュバント・セラピーとは補助療法ということです。これは「手術が主」で「術後の薬物療法が補助」で、これが気に食わない。それに「ネオ=新しい」という接頭語を付けたネオアジュバアント・セラピーという単語は、ますます気に食わないし、意味がわかりません。
英語では「Primary Systemic Therapy(PST)」という言葉も使われ始めており、実態に即した用語だと思います。私はこれを「早期全身治療」と訳して積極的に使っています。乳がんと診断がついた時点で、すでに存在している、タンポポのタネのようなmicro metastases=微小転移を駆逐するために、早い段階から全身に効果の及ぶ治療をする、という意味です。
シコリを見つけ「乳がんではないか?」と心配した患者さんが当院を受診されると、まず針生検を行い、悪性か、良性のしこりなのか病理診断をします。乳がんであった場合、サブタイプが決まります(表)表決まり次第、早期全身治療を開始します。ルミナルならホルモン療法、ハートウ・ディジーズ(HER2・Disease)ならハーセプチン+パージェタやカドサイラ、トリプルネガティブならば、アドリアマイシンやタキソールなどです。
  ※ハートウ・ディジーズHER2の遺伝子が増幅または蛋白過剰発現が認められている浸潤性乳がん
早期全身治療を続けながら、月一回、超音波検査を行い効果を確認。全て消えてしまうこともあり、手術をしても顕微鏡で見ても、がん細胞が全て消えている〈病理的完全寛解〉こともあります。その場合は、手術しなくてもよかった、ということになります。
早期全身治療で、しこりが消えるということは、同時に、どんな検査をしても検出することができないけれど、全身へ広がっている可能性のある微小転移も消えている、ということです。「早期全身治療の期間はどれくらいですか?」という質問はよくあります。術後薬物療法の期間は5年から10年とされていますから、これと同じように「5年から10年」と考えて頂いていいと思います。
「手術しないで5年から10年も放っておいていいのでしょうか?」という質問もよくあります。決して放っておくわけではなく、乳房の腫瘍は、超音波、MRI、マンモグフィなどで定期的に観察していれば消えてしまっている、ということが確認できますし、全身の微小転移(タンポポのタネ)に対する効果は、5年から10年で撲滅できることは術後薬物療法で検証されていますから、問題ありません。
薬物療法は、大昔からある細胞毒性抗癌剤、ちょっと昔からあるホルモン剤、新しくも古くもない抗HER2薬、新しいCDK4/6阻害剤、割と新しいPARP阻害剤、すごく新しい免疫チェックポイント阻害剤など、新旧取り混ぜて数多くの薬剤が適したサブタイプ毎に威力を発揮しており、「手術が不要な時代がすでに来ている」と言っても過言ではありません。

 

 

 

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