AKEBONO NEWS No7に掲載された記事です

 2020 年12 月に会社の健康診断で乳がんと診断されました。健診は、35 歳から8000 円で、婦人科や人間ドックが受けられました。それでも、仕事が忙しいのを理由に1 年見送り、36歳で初めて乳がん検診を受けました。
 エコー技師の画面を見る目が険しくなり、写真を10 枚以上撮り、そのあと、医者を呼びに急いでいた様子を見て、「これはがんだ」と察しました。翌日午前の仕事中に病院から電話があり、本日中に必ず受診するように言われ、上司に午後早退をお願いして、医師から正式に告知を受けました。あの技師の様子から、乳がんである覚悟はできていて、悪いものであるなら取ればいいと軽くとらえていました。
 その日の夜、父に電話で、「乳がんのため手術をする」と話すと「大丈夫なんだろう」と落ち着いていました。定年後に胃がんや前立腺がんなどに罹った親類もいて、みんな術後、通常の生活に戻って天寿を全うしていたのを知っていたからだと思います。
 会社の課長には、すぐに「乳がんで手術が必要」と話し、同僚にも隠さず伝えることにしました。課長が、がんサバイバーであることや、少し前に同僚が婦人科の手術をしていたこともあり、職場の理解は得やすかったです。欠勤日数分は、初日を除き、健保より傷病手当金が支給され、入院費も高額療養費制度により払い戻されて、年末の医療費控除は夫名義で申請し、私が申請するよりも多く返金されました。

手術する病院と手術方法を選ぶ
 健康診断をした病院から紹介状をもらい、通院を考慮して、徒歩圏にある大学病院に決めました。持参したマンモグラフィ画像が見えづらいということで、再度マンモグラフィを撮りました。推定35 ミリの腫瘍、手術方法は左乳房全摘で、抗がん剤なし、放射線治療になるだろうと言われました。
 セカンドオピニオンでは、同じように言われ、追加でリンパ節も針生検したほうがよいと言われました。サードオピニオンでは、自費治療200 万の放射線照射のみで手術なしとの方法も言われましたが、怪しかったので、やめました。
 最終的には最初の病院の先生の言う通り、全摘にするつもりでした。しかし、手術日まで時間があったので、ネットで乳がん治療ブログを見たり、YouTuber の動画を探したりしていると、標準治療以外の方法をしている方を見て、私も他の選択肢があるのではないかと思い始めました。
 温存できるのではないかとか、全摘すると左右のバランスが崩れて支障が出るという記事が気になったり、乳房再建する場合、スケジュールが長く、その度に仕事を休むことも嫌だなと思ったりしました。改めて、『患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019 年度版』(日本乳癌学会編)を見て、手術方法の変遷や再発率を考え、主治医に相談して、全摘ではなく温存にすることを了承してもらいました。手術中のセンチネルリンパ節生検で転移が確認された場合は、廓清になることは了承しました。
 手術は寝ている間に終わったという感じでしたが、自分で歩いて手術台に上るというのは二度としたくないと思いました。大学病院なので、研修医や学生が6 名ほどガラス越しに見ていたこともあり、今後手術などあっても大学病院はやめよう、と決めました。
 手術後の痛み止めも効かなくて、手術で傷ついた神経が痛むのか、ときどき針で突かれるような痛みがあったり、体力も落ちていたので、退院後も1 週間仕事を休みました。

術後の検査結果→抗がん剤治療
 結果は、ホルモン陽性、HER2 はFISH 法で再検査となり陰性、腫瘍65 × 35 ×20(mm)、リンパ節転移4 つでした。腫瘍が術前に聞いていたよりも大きかったことと、リンパ節転移が4 つ以上のため、抗がん剤治療となり、落ち込みました。
 体力の低下を感じたので、抗がん剤治療を前に退職して、術後治療に専念することにしました。2 週間毎のAC 療法となり、抗がん剤の吐き気止めも効きにくい体質だったようで、1 週間はベッドで寝たきりで、塩味の味覚障害、倦怠感、嘔吐、下痢、脱毛、末梢神経障害など副作用のフルコースでした。
 一日も早い再就職を目指し、なんとかカロリーメイトなど食べつつ、体重を減らさないで終えました。当時の写真を見ると、むくみもひどく、大変だったなと思い出します。抗がん剤の副作用は、いずれ抜けるという主治医の言葉を信じて、放射線治療から3 か月が経ち、負担の少ない仕事に再就職しましたが、一日中倦怠感がひどく、机に座っているのがやっとだったので、半年で退職しました。

副作用で睡眠不足→慢性疲労
 タモキシフェンとリュープリンによる更年期症状を緩和する漢方薬を処方してもらっていても、効果を実感できませんでした。そこで、神奈川県立がんセンターの東洋医学科で診てもらったところ、ホットフラッシュによる夜間覚醒(3 回)のため、睡眠不足となり慢性疲労のような状態になっていると言われました。睡眠を改善する漢方薬をいろいろ処方してもらい、右肩上がりで改善しました。鍼灸院も紹介してもらい、そこにも通いました。結局、1 年半のリュープリン治療を終えると頭の霧が晴れるようにすっきりしました。

治療を中断して妊活中
 現在は妊娠を強く希望しているので、反対する主治医をセカンドオピニオンの回答をもって説得し、了承を得て、10 年予定のホルモン治療を2 年の予定で休薬しています。何事もやらずに後悔したくはないので、力を尽くしたいと思っています。並行して養子縁組も視野に入れており、これからの人生の歩みも、いろいろな方の支えを受けながら、楽しんでいきたいと思っています。