53歳での発病時ステージ3b。
術前化学療法(ドセタキセルとTS-1)を6クール(18週間)後、左乳腺全摘と左リンパ節郭清手術。
術後はホルモン剤(レトロゾール)を5年間。2017年秋より、骨粗しょう症予防薬のみ服用中。

(6)手術から5年経過
術後はホルモン剤「レトロゾール」を服用。4年間は副作用もなかったので、通常の5年間を10年間に延長して飲む予定だった。しかし5年目になり急に、副作用の骨密度減少が確認されて、延長せずに5年でおしまいになった。
今は、骨粗しょう症治療薬のみ処方されている。

術後は年一度PET-CT検査をしているが、今のところ転移や再発はない。
退院後は仕事に復帰したが、2年ほどして父が亡くなり、母の世話もあるので退職した。

(7)がんを体験して
乳がん要因と言われるものに、私はほとんど該当しない。
だからきっとこの先も、がん予防の食品とか生活習慣などについて過敏になることなく、好きなものを食べて好きなことをして、無理はしないでいくつもりだ。
突然亡くなる疾患に比べて、がんは理想的な死に方だとさえ言われているらしい。
身辺整理をする時間があるし、緩和治療も整えられている。他のがんと違って、乳房摘出は生命維持にも影響がない。
そんなこともあって、乳がんがわかったとき、不謹慎ながら私は、内心ほっとした。
また、必ず訪れる「死」について、がんという病名がきっかけで早めに自覚することができた。親たちの老いや死への不安を見聞きしていたが、いつか来るその日までの時間をどう過ごせばよいか、具体的に考え始めることができた。この機会にたくさんの物を捨てたし、アルバムなどの思い出の品も整理できた。

当面は親を看取るという目標があるので、がん関係情報については、常にネットを見たり図書館の本を読んだりしている。
闘病記やブログも手当たり次第に目を通しているが、若い患者や、家族や夢のためにもっと生きたい方たちに、容赦ない現実と運命が訪れるのを知るたびに涙する。そのうえで常に、わが身にも置き換えて考えるようにしている。

ネットも参考になったが、地元のあけぼの会のハウスに参加して、当事者の方々から直接聞く体験談は重みがあった。
中でも忘れられないのは、ご本人の治療が終わって元気になったころ、ご主人がうつ症状になった、というものだ。
確かに、患者本人は闘病に必死なので充実感さえある。副作用については「この苦しみが家族じゃなくて自分でよかった」と心から思った。しかしそばでつらい様子を見ざるを得ない家族は、なすべもなくてもっと苦しかったことだろう。
乳がんには遺伝性もあるから、娘の将来も気になる。ポジティブ過ぎる、と子どもに評されているノーテンキな私と違って、夫や子どもたちはよほど繊細なので、これからもせめて本人は家族を思いやり、いつまでも楽天的でいたい。
 
お風呂の鏡に映る、左胸に大きく斜めについた傷あとも見慣れた。胸は大きくウィンクをしている。