イギリスは春真っ盛り、木々は新緑に燃え、花々は気高く咲き誇り、1月にいた時のあの惨めな国と同じ国にいるとは思えない。キューガーデンへ行ってきた。広大で、何回行っても見切れない。半端じゃない世界遺産。でも寒かった。2年前にはなかった森林鉄橋、Tree Topに登ってみた。105段の鉄階段を上を見ずにひたすら登り、心臓テスト。人生と同じ、苦しいとき上を見てはダメ、一歩一歩踏み歩く。てっぺんは当然風当たりが強くて、急いで降りるとすぐ温室へ入って暖を取った。温室内はジャングルのように木々が生い茂る。
キューガーデンの真上をヒースロー発着の飛行機が飛んでいる。まさに手を伸ばせば届きそうな低空。それで近隣の住民はアイスランドの火山噴火による空港閉鎖で、滅多にない空の静寂を喜んでいたそうだ。イースターホリデイ週末もあって、海外に出ていた英国民が15万とも25万ともいわれていた。風向き加減で、スペインの空港だけは閉鎖しなかったので、各地からスペインに飛んで、そこから陸路フランスの港カレーへ向かい、そこから大型船(2000人収容)に乗って海を渡って、ようやく祖国の土を踏んだ人たちがいた。
ドーバー海峡で知られている海峡のフランス側の港がカレーだった、と今ころ知った。カレー海峡でもおかしくないわけだけど。そのカレー波止場の人の波はまさに火山灰のごとくもくもくと湧いて出てくる勢いだった。飛行機に乗る人は通常、空港でチェックインする大きな荷物を持っている。それを自分で持って歩くしかないのだから気の毒で見ていられない。しかもフェリーボートは最初、人だけは乗せない、車輪が付いているものと一緒でなければと言われて仕方なく自転車を買ってきて、ようやく乗り込んだ人もいた。
噴火後5日も経ってから飛行安全許可を出すのなら、何故もっと早く出せなかったのか、説明すべきだと関係者が責められたり、この間にかかった全費用、ホテル代、食事代、移動にかかった運賃などエアラインが払ってくれるのか。EU圏内では規定で払うことになっているが圏外は払わないとか、それで高級ホテルに泊まってホテルの食事を連日食べた人に全額払うのか、など巷はけんか騒ぎになっている。どこのエアラインもこんな惨事は予想外だったので、規定でやむなく払うには払うが、踏んだり蹴ったりだと嘆いている。
この日曜は有名なロンドンマラソン、今年は記念すべき30周年記念年で、36,000人のランナーを予定している。それが天気予報で、昼過ぎには20度を越えるというので、10万本の水ボトルを用意しなければと言っていた。また、頭からすっぽり被るような衣装を着る人たちも困惑している。派手な衣装は基金集めのためで、今朝のテレビに心臓財団のファンドのために走る人たちが映って、なんと全身シルバーメタルの甲冑なのだ。メタルに20度の太陽が照り付ければ暑さは何倍か、目を回してぶっ倒れてしまうのではなかろうか。
そして選挙がある。5月6日。3人の党首がこれまでに2度、テレビ討論を展開して、毎回、人気投票で順位を決めている。現政権労働党のブラウン首相、対する保守党のキャメロン党首、そこへ自由民主党(中道左派)の若手クレッグ党首、当選議員数の一番多い党が政権奪取、この3人のうち誰かが首相になる。火山噴火の余熱が選挙日まで続く。