12月17日(金)ANA機は雪のせいで上空を10分くらい旋回したが、それでも予定より1時間も早くヒースロー空港に着陸した。日本からの追い風がかなり強かったのだろう。見渡す限りの雪景色には少しひるんだが、迎えのミニキャブに乗って、難なく家に着いた。機内で隣に座ったイギリス紳士に雪の話を持ち出したら、明日が凄いそうだと言う。あらそうかしら、程度に聞き流していた。それが当日、朝から雪が降りしきり、気温は氷点下、空港全面閉鎖、幹線道路の事故多発、大雪騒動の火蓋が切って落とされたのだった。

 英国航空(BA)は土曜のフライトは全便キャンセルだから、空港へ来ないようにといち早くTVなどで発表、反論も出たが、結局は賢い決断だったと評価された。世界一発着率の高い空港の雪害対策が万全ではないことでイギリス政府も非難されている。またなんと言ってもクリスマスまで秒読みというタイミングが最悪。しかもクリスマス前最後の週末、ラストミニイッツショッピングの予定をしていた買い物客が動けない。有名デパート、ジョン・ルイスも2店は閉鎖、一年で最も稼ぎ時週末が消えてしまって、商戦にも影響大。

 

 日曜午後4時、外はもう暗い。息子とクリスマスツリーを買いに出かけた。いい木は売り切れてずんぐりツリーしか残っていない。木なら何でもいいんじゃないの。私の無責任は容れられず、別のショップへ向かわんとすると、なんと車が動かない。凍りついたドアを無理にこじ開けたせいか、ルームランプがついたままだったらしい。途方にくれた足でスターバックスに入り、息子は指南書を読み始める。同時にAAに連絡した。会費を払ってメンバーでいたのか定かではない。恐る恐る電話したら、20分で来てくれるという。

 AAのお陰で車は動いたが、遅くなったので、ツリーは諦めて、ホームへ向かう。肝心の病人に対面していない。4ヵ月半前とそう変わりなくやつれていたが、とにかく生きていた。私のフィリッピン娘リリオちゃんとも感激の再会だった。リリオは心からやさしく病人に接してくれている。7月に日本に帰って以来、私は何もしていなかった。みなさん、ごめん。新しいテレビを買って、ベッドから見られるように設置してある。DVDも映せる。何より、週4日、夕方6時から夜10時まで詰めるリリオがTVで少し気を紛らしてくれればいい。 

 娘がバンコックへ移動してから、我が家には若いお嫁さんが住み込んでいる。と言っても正式に籍は入っていないし、一寸先は未定。イタリア人のアリちゃん。この厳寒の日々、マーケットで働いていて、それが外。凍死してもおかしくないのに、若いのか続けていて、年末まで休みなし。私が来てから、帰るとあったかい夕食が待っているので、大喜び。食事を作ってくれるのはイタリアにいるママだけ、と言う。その代わり、これからずっと息子の面倒を見るのよ、と詰め寄るのはまだ早い。ここで逃げられたら、一生の悔い。

 娘と孫のリラは24日早朝7時にヒースローに着く。飛行機が本当に飛んできて着くのか、着くまで信じられない。それでも料理長の私は年に一度のターキーを焼いて、クリスマスディナーの格好をつけなければならない。プレゼントも買ってない、こんな年中行事を誰が始めたのか知れないけど、人騒がせね。山下達郎の「誰も来ない」ソングでも聴くか。

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