●今日は5月第2日曜日、日本全国、赤いカーネーションの‘母の日’です。あけぼの会では「お母さん、乳がんで死なないで!」というギョッとするキャッチコピーを掲げて、街頭や公園でポケットティッシュを配布します。このキャンペーン、今年でなんと30回目、そして、これが最後になることに決まりました。「お母さんはわが子を、特に幼い子達を残して、乳がんで死んではいけない」これは同じ母である私たち体験者からの心のメッセージ、全国津々浦々に届いたでしょうか?30年は長かった。
●この30年に、日本女性が、乳がんについて積極的に知り、学び、自己検診をして、マンモグラフィー検査も受けて、よしんば乳がんであったとしても手遅れにはしない、という決意を見せたか、これが怪しい。関心の度合いも低ければ、検診受信率も延びていない。よって、死亡率も目に見えて下がってはいない。要するに、進歩向上が見えない。私たちの切なる叫びは何だったのだろうか?何の役にも立たなかったのだろうか?
●今や行政も重かった腰を上げ、あの手この手でがん検診を普及しようとしている。ありがたいことだ。あけぼの会は30年も前から、乳がん死を減らすことを祈って、微力ながら、まさに身を賭して、<母の日キャンペーン>を粛々と続けてきた。実によくやったと思う。
●中には、がんが再発して、かなり辛い治療中の身ながらキャンペーンを主導して、健康女性にティッシュを手渡していた人もいた。がんを早期に見つけなかった自分の悔いを他の人には味わってもらいたくない強い願いがあったのかも知れない。がんはなんと言っても早期発見、そして、的確な治療、それが勝因であることは、いつの時代も変わらない。それなのに、近年は乳がんを命の病気というより、いかにして手術の傷跡を修復して、元通りにするか、中身より外観を主に語る傾向にあるように感じる。
●私は37歳で手術を受け、もちろん当時は全摘手術で、片方すっぽり切除された。だけど、35年余りの月日の、どんなときも、恥ずかしいとか悲しいとか思ったことはない。生きるのに忙しくて、そんなことに気が回らなかったからだ。がんの後は精一杯、充実の日々を生きている。今でも、あけぼの会の仕事に打ち込んでいる。命に感謝している。ただ、会員の中に最近40代後半で亡くなった人、30代で厳しい抗がん剤治療を受けている人、ご主人と最後の海外旅行を終えて亡くなった人、いろんな人たちがいる。
●言いたくないが、がんで死ぬのは悲劇である。がんなんかに人生を取られてしまうなんて、絶対に悔しい。でも日本のあちこちでこの瞬間にも悲劇は起きている。<母の日キャンペーン>は今年でおしまいになるのだが、私たちは体験者として、これからも生きている限り、啓発メッセージを送り続ける義務がある。あけぼの会の勇敢なる有志たちよ、今日のキャンペーン!一人一人がありたけの愛と勇気をもって、命の尊さを伝えていこう。