ークリスマスパン試作中ー<br>食べられるリースークリスマスパン試作中ー
食べられるリース

⑧レーズン入りカレー
 高校卒業後、東京に進学し学生寮に入りました。600人が生活する大きな寮でした。
 まるでお風呂屋さんのような大浴場が2カ所あり、食堂は寮生全員が座れる広いものでした。お風呂掃除や食事の配膳、食器洗いなどは寮生が当番制でやりました。
 2段ベッドのある4人部屋で地方出身の仲間と過ごしました。ゴールデンウィークや夏休みが終わり、帰省先から戻ると、それぞれがふるさとから持ち帰ったご当地お菓子がずらり。夜に自習時間があるのですが、そのときだけはお茶会になっていました。  
 食事は朝昼晩3食を寮で食べます。その中のメニューで印象深いのがカレーライスです。レーズンが入っていて、とても驚きました。他の友人も初めて食べたと言っていました。 
 その後、大学の西洋料理の調理実習で、骨付きの鶏肉が入ったカレーにレーズンが入っているのを発見。都会のカレーはおしゃれだなあと思っていましたが、寮のメニューを考える栄養士さんは、大学の先輩だったのです。 

⑨たちじゃこう草  
 二十数年も前のことですが、念願だったイタリアでパン講座を受講するツアーに参加しました。  
 ポンペイでは発掘されたパン屋さんの遺跡を巡りました。2千年前の街にパン屋さんが複数あり、現在と比べても遜色のない石窯が作られていたことを知りました。  
 ローマでは、ビールの天然酵母を使ったパンを習いました。そのレシピの中に日本語で「たちじゃこう草」と書いてあり、それが何のことか誰も分かりません。イタリア語を日本語に訳す辞書を持っていた通訳の人も、お手上げ状態でした。 
 イタリア人の女性の先生に尋ねると、「皆さん、日本人なのになぜ分からないの」と、逆にまくし立てられてしまいました。 
 実物を見ると、ハーブのタイムのことでした。イタリア語では「ティーモ」と言うそうです。日本人は「たちじゃこう草」なんて誰も言わないので、イタリア語の方が通じたかもしれません。  
 料理好きの日本人二十数名が、イタリア人から日本語を教えてもらうなんて、笑っちゃいました。

⑩カヌレ  
いい色に焼けましたカヌレ、いい色に焼きあがりました〜 「カヌレ」というお菓子は今ではケーキ屋さんでも売られ、専門店もできるほど一般的になりましたが、二十数年前に新潟で初めて習った時はとても驚きました。  
 こんなに表面が真っ黒なお菓子を見たことがなかったからです。当時、新潟でカヌレを見かけたことはなく、東京で流行し始めていた時期でした。
 作っている段階で私の好きなカスタードと材料が似ていたので、「好きなお菓子かも」と期待しました。出来上がって試食すると期待通りのおいしさで、とりこになりました。焼きたては特に表面がカリッとしていて、内側はもっちりしています。早速作って近所の方や友人に紹介し、もちろん自宅でやっていた教室でも生徒さんに教えました。「これ、真っ黒だけど失敗作ではないのよ」と必ず一言添えて。
 「人気ケーキ『カヌレ』新潟に」という見出しで、カヌレが初めて新潟で売りだされ、行列ができているという記事が新潟日報に載ったのは、それから2年もたったころでした。