会長 ワット隆子

昨日、<あけぼのハウス>の初日、予約が会員と一般合わせても13人という少し心細い幕開けでした。しかし、実際に開始時間の午後1時をめがけて、5、6人が来場し、受付ですぐにも話を始める人もいて、会議室のテーブルを並べ替え、スタッフが席に着くと同時に、来場者も向かい合って着席、徐々に、広めの部屋いっぱいに話し声が満ちてきました。

みなさんが真剣に話をし、また傾聴するほうもきちんと距離を置いていて真摯さが溢れ、実にすばらしい光景が見えてきました。「数ではない、この重み、充実感だ」と、手ごたえを感じたのです。ほっとしました。まずは成功!

私は総指揮官なので、いつもはスタッフにお任せなのですが、人が足りなかったのと、相談のテーマに関心があったので、一役買って出ました。それは手術前の人で、術式を決めるのを迷っている49歳の人でした。

・2センチのしこり-悪性と診断

・マンモトームの検査結果を待機中(この結果で後々の治療方針を決めると言われている)

・全摘か温存手術か、決めなければならない

・どちらにしても予後は変わらない、と言われた

・「全体的にどっちが多いのですか」と医師に尋ねたら「半々です」という答えだった

・温存手術で済むのなら、なぜ「全摘手術」の選択肢を出すのか、ここが解せない

・温存手術ではあとに放射線治療が25回、週5日ぶっ通しで5週間はかかる、このこと

 を知らなかった(これは私のほうで言ってしまった)

・独身で仕事を持っているが、治療費も心配している

この人は非常に冷静で、考えも疑問も実にしっかりしていて、驚きました。こういうタイプの患者がこれからますます増えていく、それには本当に納得のいく答え方をしなければならない。しかし、最終的には決めるのは本人ということになってしまう。こんな大事な事を、医師も自信と責任を持って決められないで、患者に決めさせる時代とは一体どんな時代なのか、どこかが狂っている。これには患者や世論のいたずらな権利意識の主張にも問題があったのではないか。患者たちがまずもう一度、医のあり方に敬意を表して考え直すべきではないか、という私の持論が首をもたげたのでした。

そこで私のように持論を振りかざさないスタッフにバトンタッチしたのですが、帰りに私に挨拶をしてくれて「どっちにした?」と聞いたらはっきりと明るく「全摘に決めました」という答え。私たちが勧めたわけではなかったので、ちょっとびっくり。しかし、話をしている中で自分で到達した結論なら、それでもいいのではないか。

この他にどんな質問が出たか、後日まとめて事務報告する予定です。帰りに「こんな場所を作ってくれて、本当に感謝しています」と握手してくれた人がいて、胸がジーンと熱くなりました。やはり何を始めるにも、自信より不安のほうが大きいので、こんな素朴な声を聞くと泣きたくなります。感動の初日でした。

ありがとう、みなさん!

参加者からのお便り

「乳がんについてはあまり知識が無かったものですから、大変参考になりました。教えていただいたことをもとに、手術・術後のケアなど種々と考えていきたいと思います。ありがとうございました」

「紹介していただいた補正下着等を使って前向きに自分らしさも失わずに生活していきたいと思っています」

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