IMG-0932日時:924日(日)13301530

会場:吉祥寺(岐阜市太郎丸)  

講師:永橋 昌幸先生(兵庫医科大学医学部 乳腺・内分泌外科准教授)

   二村 学先生(岐阜大学医学部附属病院 乳腺外科教授)

参加:48名(オンライン20名、会場28名)

【第1部】永橋昌幸先生 テーマ「乳癌のゲノム医療を考えるー遺伝子情報をよりよく活かしていくためにー」

がんは遺伝子異常の病気です。親から引き継がれた遺伝子変異と、産まれてから起こる遺伝子変異があります。乳がんのゲノム医療には、「がん遺伝子パネル検査」用いたがんゲノム医療と、遺伝性乳がんに関する医療があります。ガーダント360(リキッドバイオプシー)は組織生検をしなくても採血だけで高精度な「がん遺伝子パネル検査」ができ、今後は主流になっていくと思われます。「BRCA遺伝学的検査」によりBRCA1/2変異の有無で、手術の術式や治療が変わってきます。「がん遺伝子パネル検査」により遺伝子変異に基づく治療にたどり着ける割合は10%程度ですが、未来のがん医療は必然的にゲノム情報に基づく診断や治療、そして予防を行う方向へ向かうものと考えています。

【第1部】二村学先生 テーマ「ここまで進んだ乳がん治療―乳がんと戦うために、有効なお薬を使っていくー」

乳がんの薬物療法は、サブタイプに基づいて決定されます。ホルモン療法はリスクに応じて投与期間の延長、CDK4/6阻害薬などの分子標的薬の併用が行われるようになりました。また、HER2陽性乳がんに対する治療薬としてエンハーツが使用可能となり、HER2低発現の患者さんにも使えるようになりました。トリプルネガティブ乳がんに対する新たな治療として、免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダなどが使用可能となり、再発だけでなく術前化学療法をはじめ周術期にも使えるようになりました。これらの新薬は、間接性肺炎などの副作用に注意を払いながら投与することが重要です。

【第2部】質疑応答 ※今回のテーマに限っての質問

4年前リンパ節転移、術後ホルモン治療中の参加者が、いつまでホルモン療法を続けるのか、との質問に二村先生は「フォーエバー」と明言されました。男性参加者からの男性乳がんについての質問には、永橋先生が男性乳がんは稀だが、家族歴がある人は注意するようにと、二村先生は60歳ぐらいからしこりで発見される場合が多い、と答えられました。

二村先生から永橋先生に、手術前の患者に遺伝性乳がん検査をどれくらい行っていますか?と質問があり、永橋先生は検査該当の患者が5割で、そのうちの8割が検査していると回答されました。また、お二人は「がん遺伝子パネル検査」は一生に1回しかできないが、体が元気なうちに検査をして、より有意義な治療を受けて欲しいとの思いを話されました。

【参加者からの感想】 

・私は乳がん後、卵巣がんになってからBRCA2変異が判明しました。現在、検査が保険適用となり、永橋先生から検査する人が増えている状況を聞き、気持ちが楽になりました。また、予防切除もできるようになったことを嬉しく思います。

・永橋先生が、本は染色体、本の材質である紙はDNA、書かれている文章は遺伝子、と例えて話されたのが印象的でした。

・二村先生のお話で、HER2発現を再検査することで、ルミナルタイプでは6割~7割弱、トリプルネガティブでは3割~4割弱の患者にエンハーツが使えることが分かり、治療に希望が持てました。主治医に聞いてみようと思います。

・二村先生のタイプ別の新薬の説明には、食いついて聞いてしまいました。これからも患者向けのお話をして欲しいです。

・新しいことを学び、知識を身につけることの重要性を改めて感じた講演会でした。お二人の先生に感謝しています。

・講師の先生方は、難しい内容のお話を、かみくだいて分かりやすく説明してくださり、思いやりを感じるお話のしかたで感激しました。今は問題がなくても今後、何かあった時のために参考になりました。ありがとうございました。

報告 清水美香(あけぼの岐阜会員) https://akebonogifu.jimdofree.com