●日本のみなさん、さっさと第2便を書かないですみません。私がロンドンに戻れば、また昔のように頻繁に便りが載ると期待していたでしょう?そうはいかない。それにしても昔、病人がいたころは日本からも声援のメールがどんどん入ったのですが、今はしらっと白けて、ほんの2,3のサポーターからしか反応がない。岐阜や北海道枝葉郡のひと、書いてくれるなら、今でしょ?なんて。こっちに来れば、私の魂は自由、仕事抜きのプライベートな会話ができる。この空白的時間を有効活用したい。みなさん、メールをください。
●フィリッピン娘のハズバンドは好青年だった。英国北部の町で生まれ育ったので、強いアクセントがある。英国人にしては背が低かった。リリオも小さい。二人はネットで知り合ったのだが、最初に書いたのが「私は背が高くない」だったとか。知らない者同士が、背が低い、という断り付きで会って、愛をはぐくみ、結婚に漕ぎ付けたのだから、映画のストーリーのよう。ネットは、怖いか、当てにならない、という先入観があったのだが、こういうケースなら理想的。私ももう一度結婚がしたい。ネットで挑戦してみるか?
●リリオの家族がフィリッピンから両親、兄、妹と来て、こちらに住んでいる姉と全部が2ベッドルームの家に寝泊りしているという、おまけに両親は熱心なカトリック信者なので、生涯一度のバチカン詣がしたい。7月20日に来て、9月30日までヨーロッパに滞在するという、夫婦で2ヶ月以上の外国滞在、この宇宙感覚が日本人にはない。旅費他経費は子供たち全員で出すのだという。お姉さんが理学療法士でドバイの大金持ちに気に入られて、あちこちへの旅行に同行してマッサージなどするのが、仕事で超高給取りだという。
●雇い主と同じ高級ホテルで泊まり、同じ食事をして、旅行気分で仕事なんて、世の中不公平。しかし、この人の稼ぎで、ほとんどの経費はまかなわれた。ついでだが、リリオの弟はまじめなゲイでこの国の男と正式に結婚している。胸はとっくに作って、今はカンジンカナメを取っ払いたいと唸っているそうだ。地球上にはいろんな人間がいるものだ。また、このお姉さん、男以上に稼ぐだけあって、女の人と結婚している。あとは想像して。
●やっと本職の乳がん情報。あのぺルツズマブ(商品名・パージェタ)という薬がこの国のNHS(ナショナルヘルスサービス・医療費が無料の国営保険制度)では受けられないと決まった。それに対して、Breast Cancer Campaign という団体(主にリサーチを支援)が「非常にがっかりした」との声明を出した。進行乳がんに対して、この薬をハーセプチン+抗がん剤と併用すると平均6ヶ月の延命が実証された。それなのに、何故ダメなのか?はっきりと(この薬は)「not VALUE for MONEY、お金に見合わない」と言っている。
●何も手立てがないと宣告されてから、もし6ヶ月確実に延命できると聞いたら患者は飛びつくだろう。しかし、抗がん剤の新薬開発に賭ける膨大なお金と年月が、数か月単位の延命のためだったなんて、余りに悲しすぎる現実ではないか。患者は6ヶ月位の延命では到底心安らかにはおれない。月日が日に日に目減りしていくのを見つめるだけだろう。がん治療の世界とはこういう世界だったのか。何の証拠もないのだが、私には、藁をも掴むがん患者がいいように利用され、その裏で誰かがボロ儲けしている世界に見えてならない。