日本のみなさん、お待たせしました。3ヶ月ぶりのイギリス、今、4月18日日曜朝2時、日本は朝10時、夏時間時差は8時間、狂った英国生活の始まりです。到着の報告が遅れたのは、私のパソコンが引越し荷物の奥底に隠れて出てこなかったせい。倉庫に預けた大量のダンボールの中ではという恐怖の憶測も漂い始め、済んでのところ、新しく一機買う話まで出ていた。それが、最後まで点検しなかった小型スーツケースの中からひょこっと顔を出した。娘は箱の中に入れたという思い込みしかなくて、箱だけに絞って探していた。
病人の様子見に来たはずが、連日ダンボールの片付けに追われて、へたばっている。施設から二度と連れ戻すことはないと決めたので、車椅子対応3LDK高額マンションを引き払って、出発点だった2LDKに舞い戻った。半分の狭さだが、ここは自分の持ち物なので、家賃を払わなくてもいい。覚えているだろうか、息子がアメリカから来て間もなく盲腸になったあのマンション。2006年2月24日だったか。この4年の間、市内のマンションに転々と2年ずつ移り住んで、振り出しに戻ってきた。一体何だったのだろう、この年月。
病人は3ヶ月の空白など気にかけている様子もなく、ベッドに沈み込んでいた。頭をなでながら、じっと顔を見るのだが、私に気付いているのか、いないのか、何の反応も示さない。私も会いたい気持ちで来たはずだったのに、そんな気持ちはなくなって、ただ儀礼的に見ている。もう、かわいそうとも思わない。どうでもよくなった。この人のせいで、正直、私は疲れ果ててしまった。息子だって娘だって4年半の月日をそっくり父親に捧げてきたようなもの。引越しの苦労だって、元はと言えば、病人中心の生活のためだった。
息子は今日休日、18度、夏到来の陽だまりの中へ病人を連れて出て日光浴、その後ひげを剃り、その後シャワーに入れた。何でも要領よくやるので、私はただオロオロと見ているだけで、ロイ・オービソンを聞いていた。子供たちは今でも毎晩、代わりばんこにホームへ行き、病人を寝かしつける儀式を続けている。体を拭き、歯を磨き、マッサージをして、排便があればその始末をする。こちらのホームも人手不足、特に夜は手が借りられなくて、一人で始末することが多いという。少しも手を抜かず、不平も言わず、続けている。
(ここから19日)アイスランドの火山爆発5日目、火山灰が高度24,000~30,000を群れ飛んでいて、飛行機の行路をふさいでいる。火山灰は厚いガラスの破片ほどに硬く、それがまともにジェット機のエンジンに入り込むのだという。この世に9・11のテロほどの最強はないと思ったけど、こんなに一瞬で世界の動きを止めてしまうテロがあったとは。5日目を迎えた英国全土、ほかヨーロッパ22の国のエアポートは沈黙したまま、出発の時を待っている。ブリティッシュエアウエイ社の被害額は一日200×100万ポンドだという。
テストフライトのOKサインが出て、明日は飛び始めるらしい。が、明言は避けている。日本人観光客がパリの空港でラジオ体操をしている画像が流れた。20人くらい、主にオバサンの団体だった。恥ずかしいから止めてくれと言いかけたが、待てよ、私がもしあそこにいたら、やりましたね、しかも陣頭指揮して、チャンチャカチャンと曲まで付けて・・・。