●帰国を17日に決めた。介護班長のフィリッピン娘、リリオちゃんが本国へ帰っていて、戻りが15日、どうしても一目会いたいのと、トンカツディナーを食べさせてあげたいので、彼女に合わせて出発日を決めた。今までで一番短い2週間の滞在、病人もすぐにどうかなりそうな気配はないのと、息子があのイタリア人のアレちゃんと今も続いているので、母さんの出番が殆どない。日本にいれば、もっと役に立つ私、現況に合わせて臨機応変、さっさと帰る。富樫さんも私の帰国が早くなってうれしいです、と言ってくれている。

●こちらに来て、毎朝の楽しみは、富樫さんにケータイメールで「本日のご機嫌は?」と伺うこと。それですぐ返事が来れば安心なのだが、なかなか来ない時もあり、そうなると気になる。メールを見る元気もないのか、見ても書く力が出ないのか、など。そんな時、突然、あけぼの会の活動予定がHPにアップしてあって、びっくり、安心する。自分の治療日記も書きたいはずなのだが、疲れが重くて、そこまでの気力が湧かない様子。最新情報は「今朝のCa値11.2でした。久しぶりに低くなりました。やったー!」

●「今日はレントゲン、明日はCT検査の予定」「いま先生が来て、ジェムは効いていると言ってくれました。ここ数日調子いいのが納得です。多少疲労感が残って、毎日寝ていて、万全ではありませんが、良くなっている、それだけでうれしいです」

●日本のみなさん、やはりフェニックス富樫は健在、安心して。事務所のスタッフも仕事帰りに代わりばんこに見舞って、私に様子を知らせてくれる。彼女たちの真に慈愛に満ちた心がうれしい。同じ釜のめし同士、ある意味、実の姉妹より濃いつながりだものね。

●私もこっちにいる間は、日本の面倒は忘れるべきだと思いつつ、どうしても気にかかる。ロンドンは初夏のお天気、朝から陽が差して、18度見当、明るく

て暖かい。寒さを当て込んで冬衣装を詰め込んできた私は着るものがなくて、息子のユニクロシャツを着ている。昨日はホームでチベット人のナースに会った。お互い年を当てっこして、私には「55くらい?」と言ってくれたのに、「あなたは40?」それがまだ30代だった。ごめん。働きながら夜間大学に通って、苦労しているから、年を取ったんだ、と笑ってくれてホッとした。

●会う人たちはみな、まだ東日本地震のこと、原発のことを話題にして、東京はどうなっている、と聞いて、終いに「日本政府が放射能漏れについて真実を発表していると信じているか」なんて、この私に聞く。「まあ、真実でないとしても何もできないと日本人は思っているのよ」そう、話をしていて瞬間的に悟ったのは、日本人の諦観、運命主義。日本人は秩序正しいだけではなくて、秩序を乱す前に、運命と悟って、諦めるから、暴動など起きない。運命主義者というと、聞こえはよくないのだろうか、でも敗北主義とも無抵抗主義とも違う、日本人独特の美徳諦観、これではないか、誰か、この結論に異議を唱えて。

●日本で一人生活もさみしいので、いずれ、娘か息子の近くに住むか同居か、なんて計算づくで考えていたのだったが、今回つくづく、彼らには彼らの生活がある、当てにするのは止めて、一人で生きていく算段をすることと決めた。なんたって私はまだ50代?なんだから。人は一人でいても家族といても孤独なら孤独なのだ。人を頼りにしてはいけない。