「浜松オンコロジーセンター・センター長:渡辺亨先生」からの手紙
先日は、ご本をありがとうございました。まだ、読んでいないんですが、外来の引き出しにおいていつでも読めるようにしてあります。昨日は、京都の外科学会のランチョンセミナーでアバスチンのセッション、司会をしてきました。外科医だけでは薬物療法は対応できない時代、外科医は外科医らしく、腫瘍内科医は腫瘍内科医らしく、ということです。
●「セカンドオピニオンにはどの先生が一番いいか?」という問いに対する答えはありません。どの医師に聞きにいくか、それは患者自身がきめることだと思います。あるいは、あけぼの会のような支援団体が相談に乗って何人かの候補を提示して、患者本人が決めるものだと思います。
私は、2001年に国立がんセンター在籍中から、セカンドオピニオンを提供する側で今まで5000人以上の患者さんに提供してきました。また、他にセカンドオピニオンを聞きに行きたいという患者さんも多数、送り出しています。その経験を通じてセカンドオピニオンについて私が守っている事をお伝えします。
(1) 宛名なしの紹介状はだめ
「ご担当先生」宛で、「いつもお世話になっています」で始まる紹介状をもってくる患者がいます。宛先も書かないで、いつもお世話になっています、はないでしょう、と思います。このような紹介状はよく見かけますが、あっさりした主治医、または、怒っている主治医のの場合、このような形で紹介状が用意されてきます。「ご担当先生」宛であっても、主治医には返事は必ず書きますし、私のメールアドレスも書いてありますから、時には、「貴重なご意見をありがとうございました」と担当医からお礼のメールがくる事もあります。宛名なし紹介状ではなく、○○病院の□□先生のセカンドオピニオンを聞きに行きたいのですが、紹介状を書いていただけますか? と主治医に依頼するのがいいでしょう。その際、自分で探せなければ、患者支援団体が支援するといいと思います。
(2) 主治医に聞いてもわからない
どこかにセカンドオピニオンを聞きに行きたい、宛先は先生決めてください、では困りますね。例えば、「すぐに手術、そのあと必要があれば抗がん剤をします」と主治医に言われて、術前化学療法について意見を聞きたいと感じている場合、やはり、すぐに手術、と考えている医師を紹介される場合があります。または、すぐに手術しなくては大変なことになる、みたいな時代遅れの考えを持っている主治医は、セカンドオピニオンを聞きに行く事に反対する場合が多いです。
(3) ファーストオピニオンなくしてセカンドピニオンなし
主治医の説明がチンプンカンプンで全然わからない、どうしていいかわからない、という場合は、セカンドオピニオンではなく、転院を考えた方がいいです。そもそも、ファーストオピニオンをきちんと提供できない主治医に、その後の治療を委ねる事ができますか?
(4) 勇気をだしてたのんでみましょう
たしかに、セカンドオピニオンを聞きに行きたい、と主治医に切り出すのはストレスフルだとは思います。「わかりました、いいですよ、どこの先生にお願いしましょうか?」と笑顔で答えてくれる医師は、そう多くはないでしょうけど、私は、患者がセカンドオピニオンを、と言った場合は、そのようにするように努力しています。
(5) へんな看護師もいます
主治医の説明が一方的で質問もできない、という場合もよく聞きます。その場合、外来の看護師に相談することを勧める場合もあります。しかし、先日、おかしな話を聞きました。ある大学病院で、主治医が不機嫌そうに一方的にわかりにくい説明をしたので、不安になって、外来看護師(しかも乳がん看護認定看護師だそうですけど)にセカンドオピニオンを聞きに行きたい、と相談したところ、「そんなことはだめですよ、先生にもプライドありますからね」と言われて失望のどん底に陥り、自分で探して、近くの別の大学病院に転院したということです。看護師は患者の味方みたいにもてはやされていますが、こんなへんな認定さんもいるんですね。
(6) 納得してもセカンドオピニオンを聞く意義はあります
主治医の説明で十分に納得すればセカンドオピニオンは聞きに行かなくてもいいと思います。しかし、そうであっても、自分の大切な体ですから、他の医師の意見を聞く事で、さらに納得して、確信を得られる場合もあります。しかし、乳腺外来はいつも満員、主治医に紹介状を依頼する手間、治療開始日がすでに計画されているのを取り消す手間など、マイナスの影響もありますから、その辺りは冷静に考える必要があります。
(7) 自分を冷静にみることも必要
抗がん剤は絶対にやりたくない、と思っている患者が、抗がん剤は不要、という意見を言ってくれる医師にであうまでセカンドオピニオンの旅を続け、巡り会った放射線科医師に、ホルモン感受性がないのにタモキシフェンだけを処方され、肝転移、脳転移でなくなったHER2陽性乳がん患者、結婚して20年以上たってもお子さんができない女性で、3cmのトリプルネガティブ乳がんになって、治療後に妊娠を希望しているので、抗がん剤は絶対したくないと希望した患者。そもそも乳がんにならなくても妊娠できない可能性は高いのだから、あきらめるべきことはあきらめた方がいい、とお話したところ、そんなことまで言われる筋合いはない、と激怒して立ち去った患者・・・。厳しい状況はわかりますが、自分を冷静に見つめることも必要ではないでしょうか、と思うこともしばしばあります。
(8) 推薦図書
渡辺 亨他. がん治療迷いのススメ-セカンドオピニオン活用術. 東京: 朝日選書; 2011.
渡辺 亨. がんになったらすぐ読む本. 東京: 朝日文庫; 2009.