昨日はいつも私を連れ出してくれるカレンとキューガーデンへ行ってきた。この茫洋たる王立庭園をどう写実したらいいものか、4万5千種の植物があるという。今年開園250年の歴史あり。ということは天に向って聳え立つ無数の大木の樹齢が250? 木には1本ずつに参国名が書かれてある。ジャパニーズ園もあって、そこには京都西本願寺の唐門を5分の4に縮小し複製された勅使門(説明はネットから借用)がある。まだ蕾みだったが、ツツジがひっそり、花は小さくて色は濃い赤。咲けば緋色のじゅうたんになるだろう。

 今を告げる桜があちこちで満開。色もとりどり、特に八重桜がしっかり、たわわに咲いていた。その咲きぶりに、思わずため息。異国で、知り合いの日本人に会ったようで懐かしかった。もみじもあった。池端に孔雀もいた。レストランでランチ。人が食べていた揚げ物がうまそうだったのでそれにしたが、ハドックという魚とブロッコリーを潰してコロッケにして揚げたもの、油のせいか胸焼けして、気分が悪くなった。思うに、この国に来て、うまいと感激したのはイタリアンか中華、どう贔屓目に見てもイギリス料理ではない。

 飛行機で隣に座った日本女性、イギリス人と結婚していて、足のつぼを押さえるリフレクソロジーを仕事にしている人だった。日本にも顧客がいて、2月から東京でホテル住まいで治療をしていたという。旅費もホテル代も出るくらい商売繁盛なんだわ、と思わず顔を見直す。夫のALSのことを話すと、知った振りをしたが、あれは何も知ってはいない。乳がんの話になると突然、全身に転移した人が彼女のつぼ療法で治った、と言い出した。ついでに、医者に見離された肺がんの男性も治ってしまったのよ、とまじめな顔で言う。

 私の手を取って「ずいぶん溜まっているわね」と即断。毒素が溜まっているのだろうか。長旅お互い退屈なのだから、ただで私の足のつぼでも押してくれ。効が奏せば、本物の病人のために出張をお願いするのに。投資でしょう、と脅すべきか。しかし、がん患者が足つぼ療法で完治したなんていうから、煙たくなる。この手の人たちはどうして、こうも軽々と「治った、よくなった」と言いたがるのだろう。サプリメントもしかり、飲んでも死んでしまった人もいると事実を述べてくれたほうが、それではやってみようかとなるのに。

 息子が私と入れ替えに日本へ行っている。着いて2日目に佐渡のおばあちゃんに会いに行った。彼はやさしいので日本に帰れば必ずそうする。その代わり、新幹線と佐渡汽船の時間を調べてメールで教え、船着き場へは、いつも私の帰省を迎えに出てくれる中学の同級生の早苗ちゃんにお迎えを頼んで、しかも出発当日の朝は汽車に乗り遅れないよう、ちゃんと起きているか国際電話で確認までしている。どうしてここまでやるか。とても恥ずかしい。息子は35、もう子供ではないのに。やりすぎママから、ろくな息子は育たない。

 私の好きな3人のイギリス人妻たちが久しぶりにみなで会ってランチとお喋りをしましょう、と来週の火曜日を決めてきた。うれしいのだが、ピーターがメンバーのデーニッシュ・クラブの食事は二度まで、三度は食べられない。昨日の胸焼けが、ぶり返してきた。それで、私が何か作るのでここへ来てと誘ってしまった。上質の油で天麩羅でも作るか。

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