5月25日、ミネソタ州ミネアポリスでGeorge Floyd(47) というアフリカ系アメリカ人 男性が警察官に手錠をかけられ地面に伏せた状態で、首を両股で9分間抑え付けられ結果、死に至るという悲劇が起きた。この一部始終がネットで流れるや瞬く間に怒った市民が「黒人の命の軽視」「人種差別」「法の正義」を訴えて町に繰り出し、デモの発端になった。画像には音声も付いていて、「呼吸ができない」「私を殺す気か」と繰り返すなまの声まで聞こえて、「I Can’t Breathe」がデモのシンボルになった。
デモは連鎖的に広がって、シカゴ、ロス・アンジェルス、ワンシントンDC、ニューヨーク州など現時点で40の州に及んでいる。そして、抗議活動は国外まで伝播され、カナダ、ロンドン、パリ、アムステルダムなどでの大規模デモになっている。ミネアポリスでは一部暴徒化して、警察署に放火したり、ビルや車を叩き壊したり、店の金品を略奪したり、目を覆う光景もあちこちで見られて、被害者の弟が「こんなやりかたは兄も望んでいないはず」と訴えるシーンもあった。各州で夜間外出禁止令が出されているが、時間が来ても続ける人がいて、逮捕された人も全米で4千を超えたという。
問題はこの国に長年まかり通って来た黒人に対する法の不平等で、今までにも警官に不当に殺される事件があっても、大体が無罪放免になっていた。この不満の蓄積が今回遂に爆発した。(中にはコロナストレスを発散させたかった人もいたのでは?)
この国家重大事を鎮圧しなければならない最大責任者のトランプ大統領、デモ隊がホワイトハウスに近付いた時、地下壕に隠れたとか、そして、もし、各州の知事が暴徒を止められない時は軍隊を投入する、などと言ってしまった(大バカ)。これに対して、エスパー国防長官が「軍隊を出すに相当する緊急事態ではない」と反対を明言して、初めての内部分裂を示した。そこへ、マティス前国防長官が胸がすく声明を発表した。「この大統領はアメリカ国民を意図的に分断させようとしている。3年間、成熟した大人のリーダーシップがなかった。平和的デモをしている市民に対して軍隊派遣は憲法違反である」これまで3年間の大統領も非難した。他にも「指導力欠如」「抗議に対するコメントはなく選挙しか考えていない」との声も上がって、11月の選挙の行方が危ぶまれている。
実際に殺人行為をした警官の他にあと3人いたのだが、傍観して助けようとしなかったことで、この3人に対する処罰もデモを続けた一つの理由だったが、結局1人は第2級殺人罪、残りの3人も殺人幇助教唆で同じ重さの刑になるのでは、という憶測だ。明日裁判が開かれる。この3人の刑を巡って、テレビで面白い表現があった。「例えば、銀行強盗で実際に金庫を開けてお金を盗った人と外の逃走車で待機していた人は同じ刑を受ける。これと同じ」と言うのだ。こんな例えを言える人、想像力か頭がいいのか、羨ましい。 ワット takakowatt@gmail.com
今日の一首:生きてまたこの花見ぬかがんのあと 命の確証往く春に問う
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